スリランカにおける農村再構築手法の実証とガイドラインの作成

タイトル スリランカにおける農村再構築手法の実証とガイドラインの作成
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 東槇 健
竹中浩一
幸田和久
白木秀太郎
発行年度 2010
要約 津波被災により疲弊した農業農村の再構築を図るため、地方行政の能力向上や住民組織の強化等の手法を検証し、得られた成果や教訓を現地語(シンハラ語)のガイドラインとしてまとめている。このガイドラインは、地方行政官の実務手引書として、農民サービス野生生物省を通じて全国の農民サービスセンターに配布され、災害等で被災した農業農村の復興に使われる。
キーワード 農村再構築、住民参加型、復興支援
背景・ねらい 2004年12月に発生したインド洋津波は、スリランカでも多くの被害をもたらした。生活基盤や公共施設の復旧が進むなか、耕作地や水利施設等の農業生産基盤の復旧はあまり進んでいない。これらの被害は目に見えにくく、農民の依存体質等復旧を妨げる要因が複雑に関係しているためである。このため農業生産基盤の復旧を、農民組織を活用しながら円滑に進める手法を検討するとともに、地方行政員を活用した農業支援システムを検証し、ガイドラインとしてまとめる。
成果の内容・特徴
  1. 津波被災後に放置されていた水田の復旧工事を実施し、復旧した水田でのコメ生産の収益の一部を水田復旧基金に拠出させ、さらにその基金を活用して水田復旧工事を進めるという継続的な水田復旧の手法をガイドラインに提示している(図1)。
    タララサウス村の実証結果として、最初に8.3haの水田復旧を行い、得られた基金を活用してさらに2回の水田復旧工事を行い、3.0haの新たな水田復旧を行うことができた。収穫量も、何年も収穫がなかった状態から県平均の7割に達する2.7t/haまで回復している。
    スリランカでは、津波の被災以外にも洪水等の被害を受けた後放置され、雑草の生い茂った水田が多く見られる。行政や支援機関が本手法を活用すれば、農民組織の自立性を高めながら、限られた予算で効果的に、それらの農地を復旧することが可能になる。
  2. 農民サービスセンターは農業農村に関するワンストップ行政サービスが期待できる機能を持ったセンターである。しかし実態は、各セクター間の連携が不十分で、住民に対する総合的な支援がなされていない。また、州農業局の農業普及員を始めとする各普及員は1~2郡に1名しか配置されず、十分な住民支援が行える人数とはいえない(図2)。
    このため、ガイドラインでは、農業補助調査員(ARPA)をファシリテーターとして訓練し、彼らが他の普及員と一緒に農業農村再構築支援に携わるシステムを小規模菜園活動での実証事例を基に提示している。このシステムの活用により、ARPAの自覚と住民の信頼感が増し、手厚い住民への支援が可能になる。
成果の活用面・留意点
  1. コロンボで開催したセミナーの席上、開発計画担当局長から、「今年度マータラ県アトゥラリヤ郡で実施する水田復旧事業にJIRCASの手法を早速取り入れたい」との発言があった。
  2. ARPAや普及員が連携して業務を実施するためには、上部機関の理解と連携が不可欠であり、農村関係機関の共同会議を実施して、情報共有と意思統一を図る必要がある。
図表1 234899-1.png
図表2 234899-2.png
カテゴリ 病害虫 雑草 シカ 水田 水管理

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