3種類のAREBはアブシシン酸を介した乾燥耐性を協調的に制御する

タイトル 3種類のAREBはアブシシン酸を介した乾燥耐性を協調的に制御する
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 吉田拓也
藤田泰成
篠崎和子
発行年度 2010
要約 乾燥ストレス時に蓄積するアブシシン酸によって活性化されるAREB型転写因子は、イネなどの陸上植物に広く存在する。シロイヌナズナの3種類のAREB型転写因子は、重複した機能を保持しながら、固有の役割も担っており、アブシシン酸を介した乾燥耐性能を協調的に制御する。
キーワード 干ばつ、転写因子、アブシシン酸、乾燥耐性、遺伝子発現
背景・ねらい 干ばつは、特に開発途上地域において農作物に甚大な被害を及ぼし続けており、乾燥耐性作物の開発は危急の課題である。乾燥ストレスによって植物細胞内のアブシジン酸(ABA)濃度が上昇し、これが引き金になって乾燥耐性関連遺伝子の発現が活性化され、植物は乾燥耐性能を獲得すると考えられている。本研究では、シロイヌナズナやイネを用いた分子レベルでの解析を通じて、それぞれの種で複数存在しているAREB型転写因子がABAを介した乾燥耐性能を制御する機構を明らかにし、開発途上地域における乾燥耐性作物の作出に必要な技術的基盤を確立する。
成果の内容・特徴
  1. AREB型転写因子の網羅的な系統解析の結果は、AREB型転写因子がシロイヌナズナやイネ、ダイズなどにとどまらず、コケ類やシダ類を含めた陸上植物に広く存在していることを示す。
  2. シロイヌナズナの3種類のAREB型転写因子が「シグナル制御遺伝子群」や細胞の保護に関わるLEAタンパク質遺伝子などの「機能遺伝子群」の発現をコントロールすることにより、乾燥耐性に関わる能力を協調的に制御する(図1、2)。
  3. 3種類のAREB型転写因子は、重複した機能を保持しながら、固有の役割も担っている(図2)。AREB1はABAによる転写活性化能の誘導性が高い点、AREB2は塩による遺伝子発現の誘導性が高い点、ABF3はABA非存在下においても比較的高い転写活性化能を示す点がそれぞれの特徴である。
  4. シロイヌナズナ(AREB1、AREB2 およびABF3)と同様、イネでも3種類のAREB型転写因子(OsAREB1、OsAREB2およびOsAREB8)がABAによる乾燥耐性関連遺伝子の転写活性化に関与している。
成果の活用面・留意点
  1. AREB型転写因子によって制御されている乾燥耐性機構は、シロイヌナズナのみならずイネやダイズにおいてもきわめてよく保存されており、乾燥耐性作物作出など、応用に際しての汎用性が高い。
  2. 3種類のAREB型転写因子の機能の重複性や特異性を考慮して遺伝子を選択し、プロモーターとの組み合わせを最適化することにより、対象植物や想定される干ばつの度合いに応じてより需要により適合した乾燥耐性作物の作出が可能になる(図2)。
図表1 234902-1.png
図表2 234902-2.png
カテゴリ 乾燥 大豆

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