半島マレーシア丘陵フタバガキ林における優占種Shorea curtisiiの択伐指針

タイトル 半島マレーシア丘陵フタバガキ林における優占種Shorea curtisiiの択伐指針
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 八木橋勉
大谷達也
谷 尚樹
発行年度 2010
要約 丘陵フタバガキ林における優占種Shorea curtisii稚樹の密度は、母樹からの距離が近いほど、また周囲から突出した尾根的な場所ほど高いことが示され、稚樹の分布が母樹の周囲に限定されることから、択伐施業においては50m程度の間隔で母樹を保残するべきである。
キーワード 林床照度、択伐施業、母樹間隔
背景・ねらい 半島マレーシアでは丘陵・山地部へと森林伐採がすすんでいる。伐採後には森林が回復し次回の伐採が可能になることが期待されている。しかし、伐採後の回復がスムーズに進まず荒廃した丘陵林が各地でみられる。森林資源を持続的に利用するためには、伐採後の森林回復を可能にする択伐技術が必要である。そのために伐採後の稚樹の発生・分布について知見を蓄積し、稚樹の生残・分布の規定要因を明らかにすることが不可欠である。この研究では、半島マレーシアの下部丘陵フタバガキ林において主要な伐採対象木となっているShorea curtisii(フタバガキ科サラノキ属)について、稚樹の分布規定要因を明らかにし、択伐施業の改善指針を与えることを目指す。
成果の内容・特徴
  1. 択伐をうけた丘陵フタバガキ林であるセマンコック試験地(4ha)において、Shorea curtisiiの稚樹(樹高30cm以上で胸高直径5cm未満)は尾根部に集中的に分布しており(図1a)、さらに択伐時に切り残された母樹から40m以内の場所に限定的に発生している。
  2. 5m区画ごとのS. curtisii稚樹の本数を、母樹からの距離(m)、斜面の傾斜角(度)、林床の相対照度(%)、および尾根・谷の指数(図1b-e)であらわすモデルを構築し、ベイズ統計を使ったモンテカルロ法によって各要因の強さを検討したところ斜度以外の3要因が選択された(表1)。ここで尾根・谷の指数とは地形の凹凸をあらわしており、土壌水分と関係がある。
  3. なかでも母樹からの距離と尾根・谷の指数がつよい負の効果をもっており(表1、平均値)、母樹に近いほど、また周囲から突出した場所である尾根部ほどS. curtisii稚樹の密度が高い。
  4. 択伐後にS. curtisii稚樹が発生するのは母樹の周囲数十m以内に限定されるので、伐採後の天然更新によって林内に広く稚樹を発生させるためには、最大でも50mほどの間隔で母樹を残すことが不可欠である。
  5. はじめからS. curtisii母樹が少ない斜面中腹や谷筋では本種を伐採することは慎むべきである。現行の択伐においてよく見られる、林内にパッチ上に母樹をまとめて残す方法では、林内にまんべんなく稚樹を発生させることはできず、次世代の森林では樹種の構成や伐採木の分布に著しい偏りが生じることが予想される。
成果の活用面・留意点
  1. 母樹同士の間隔をとりながら保残し、伐採時の林床への撹乱を最小にするためには、伐採対象木の選定、伐採木の伐倒方向、および伐採木の搬出路の設計などを慎重におこなう必要があり、現場への適応を図るためには簡便な作業マニュアルの整備・普及が必要である。
図表1 234919-1.png
図表2 234919-2.png
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