タイトル | スポアバックを用いたコンブ群落形成技術開発試験について |
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担当機関 | 岩手県水産技術センター |
研究期間 | 2006~2013 |
研究担当者 |
藤原孝行 |
発行年度 | 2010 |
要約 | ウニを除去した漁場に、スポアバッグ(コンブ成熟母藻入り袋)を用いて人為的に胞子を供給することにより、効果的にコンブ群落形成が可能となることを実証した。 |
背景・ねらい | 本県のコンブ、ワカメ等大型海藻群落は生育量の年変動が大きく、これらを主要餌料とするアワビ、ウニの漁獲量に大きな影響をあたえている。アワビ、ウニの漁獲量の安定、増大を図るには、これら大型海藻を漁場に安定して生育させることが重要である。これまでの取り組みでは、過剰に生息するウニを徹底除去し、摂餌圧を軽減させることで藻場を再生させることを実証したが、ウニを除去した漁場でも期待したほどのコンブが生えないこともあった。本研究では、周囲に胞子の供給源となる藻場が少ないことがその要因の1つであると考えて、ウニ除去処理に加えホンダワラ類等で有効事例のあるスポアバッグ(図1)を用いて人為的にコンブの胞子を供給しコンブ群落の形成効果を検証した。 |
成果の内容・特徴 | 宮古市田老(水深7~12m)に4試験区(30m×30m)を1月に設置した(表1)。大型海藻類の現存量が最大となる6月の調査では、各試験区の大型海藻の構成種及び現存量は大きく異なった。コンブが確認されたのは、ウニ除去処理とスポアバッグの設置を併用した試験区Aのみであった。一方、ウニ除去処理だけの試験区Bには、ワカメ群落は確認されたもののコンブの繁茂は皆無であり、繁茂した海藻全体の総現存量も試験区Aの1/4に留まった。試験区C及びDには、ごく少量のワカメやアカモク等が点在するのみであった(図2,3)。 コンブが大量に繁茂した試験区Aには、6月調査時点でウニの再侵入はほとんど確認されなかった。これは、生長したコンブによる鞭打ち効果(whiplash effect)によるものと推察された(図4)。6月調査時には、大型海藻が繁茂した試験区A及びBでアワビの蝟集効果が認められ、特に試験区Aでは1月の初期値65g/平方メートルの約9倍となる581g/平方メートルのアワビが確認された(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | ウニが過剰に生息し、且つ周囲に遊走子の供給源となる藻場が少ない漁場では、ウニの除去処理に加えてスポアバッグを併用することで、効果的にコンブ群落形成が可能となることを実証した。「磯焼け」と総称される藻場の衰退には、漁場ごとで様々な要因が複合的に作用していることが知られており、本県においても漁場によってはウニの摂餌圧以外の要因も影響しているものと考えられる。今後、ウニ除去やスポアバッグの設置等、藻場の再生に向けた種々の取り組みの実践に先立って、関係者が漁場ごとの藻場の制限要因を把握し、その漁場に最も適した手法を選択・実施していくことが重要である(図5)。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |