タイトル |
0.5gのモグサ量とデンプンのりを用いた施灸技術 |
担当機関 |
山口県農林総合技術センター |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
惠本茂樹
島田芳子
伊藤直弥
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発行年度 |
2008 |
要約 |
0.5~2gのモグサ量を用いて燃焼温度の測定を行った結果、モグサの量を0.5g、かつ接着剤にデンプンのりを用いた施灸は、燃焼時の最高温度が66.5℃と低く、さらに所用時間も8.3分と短く、常法(2g)と同様の効果がある。
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キーワード |
施灸、モグサ量0.5g、デンプンのり、繁殖障害のツボ
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背景・ねらい |
灸の畜産への利用は、繁殖障害等の治療への応用例が報告されているが、施灸後に火傷痕が残る上、化膿創等の発生も見られることから、敬遠する農家も少なくない。そこで、施灸時に火傷の危険が無く、かつ効果的なモグサの量及び施灸方法を明らかにする。また、改良したモグサ量及び施灸方法を用いて実証試験を行い、繁殖に与える効果を検証する。
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成果の内容・特徴 |
- 0.5~2gのモグサ量を用いて、ホルスタイン種の白い皮の上で施灸を行い、皮膚表面温度を測定した。その結果、接着剤が味噌の場合、2.0g(常法での量)のモグサ量で皮膚表面の最高温度は144.2℃となり、1.0g以下のモグサ量で最高温度が90℃以下となる(表1)。
- モグサの接着剤として水分含量が高いデンプンのりを用いた場合、モグサ量0.5gでは最高温度が66.5℃と最も低く、所用時間も8.3分と短い(表1)。
また、 モグサ量0.5gで、接着剤としてデンプンのりを用いた施灸で、常法と同様に灸終了直前に排糞等の生理的反応を確認する。 - 繁殖障害治療のツボ(図1)に分娩後15日目から及び30日目からそれぞれ3日間、モグサ量0.5g、接着剤デンプンのりで施灸したところ、自然哺乳では、発情回帰日数が33.1日、分娩から初回授精間での日数が48.2日、受胎までの空胎日数が89.7日となり、灸を実施しなかった場合、それぞれの成績は52.0日、61.4日、128.6日となり、発情回帰日数は有意に短くなる(表2)。
- 超早期母子分離でモグサ量0.5gの施灸した場合、発情回帰日数が21.0日、分娩から初回授精間の日数が44.6日、空胎日数が63.5日となる(表2)。常法の2gで施灸した成績と差はなく、施灸しなかった場合と比べ分娩から初回授精間の日数が有意に短くなる。
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成果の活用面・留意点 |
- モグサ量0.5g、接着剤としてデンプンのりを用いた施灸は燃焼時の最高温度が70℃以下で、施灸の効果は常法と変わらない。この手法を用いて分娩後15日目から及び30日目からそれぞれ3日間施灸することで繁殖機能の回復が図れる。
- 灸は簡易な民間療法であり、化学療法とは異なり、劇的な効果は期待できないものの副作用がないことから、農家自身での実施が可能である。また、ヨモギからモグサを作成できることから、コストをかけずに繁殖管理の改善が期待できる。
- 灸は火を用いることから、牛舎内で施灸する場合モグサの落下による火災に注意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
コスト
繁殖性改善
よもぎ
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