タイトル |
土壌中に蓄積するタンパク様窒素化合物のチンゲンサイによる直接的吸収 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1991~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
チンゲンサイは,菜種油粕を施用した時,生育および窒素吸収量が硫安施用区よりすぐれ,菜種油粕の分解過程において土壌中に蓄積したタンパク様窒素化合物(分子量約8000~9000ダルトン)を直接的に吸収している可能性がある。
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背景・ねらい |
一般に,植物は土壌中の無機態窒素を主に吸収利用するが,作物によっては,有機物施用に対する生育・窒素吸収反応は,かならずしも無機態窒素の生成量で説明できない場合がある。これまで,陸稲が何らかの形態の施用有機態窒素を吸収利用していることを報告した。また,1/15Mリン酸緩衝液(pH7.0)で抽出される土壌窒素は約8000~9000ダルトンの分子量を持つ均一なタンパク様有機態窒素であることを報告してきた。ここでは,品質向上や環境負荷削減技術としてその対応が考えられている野菜類の施肥管理について,窒素吸収反応と有機物施用との関連で解析した。
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成果の内容・特徴 |
窒素源(100mg N kg-1)として菜種油粕と硫安をそれぞれ施用したポット(培地は黒ボク土およびバーミキュライト)に,チンゲンサイ,ニンジン,ピーマン,レタスを栽培し,また,無栽培ポットについて生育期間中の可給態窒素の形態別変動を測定した。
- 生育期間中の無機態窒素量は,菜種油粕区では,硫安区より少なく推移し,また,リン酸緩衝液で抽出されるタンパク様窒素化合物は,菜種油粕区で顕著に増加していた(表1)。
- 播種後14日の幼植物をポットへ移植し28日目に,これら4作物を収穫し,その窒素吸収量を分析した。ピーマンとレタスでは,無機態窒素に富む硫安区の窒素吸収が多く,チンゲンサイとニンジンの生育・窒素吸収は硫安区よりも菜種油粕区で優れていた(図1)。
- 菜種油粕区および無機塩のみで水耕栽培されたチンゲンサイとピーマンの導管液(溢沁液)を採取し,液中の280 nm における吸収物質をHPLCで分析し,比較した。その結果,分子量約8000~9000ダルトンのタンパクのピークは,菜種油粕区のチンゲンサイのみから検出され,水耕区のチンゲンサイ,およびピーマン(菜種油粕区および水耕区共に)からは検出されなかった(図2)。
- 以上の結果,チンゲンサイは土壌中に存在するタンパク様窒素化合物を直接吸収利用している可能性が示唆された。
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成果の活用面・留意点 |
土壌中の有機態窒素を直接利用できる可能性のある野菜類については,有機態窒素の寄与がどの程度か,また,野菜類による有機態窒素の直接吸収と品質についての検討が必要。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
水耕栽培
施肥
チンゲンサイ
にんじん
播種
ピーマン
陸稲
レタス
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