タイトル |
農村集水域小河川(帆崎川)の平水時における水のトリハロメタン生成能 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1995~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
農村集水域小河川(帆崎川)の平水時のトリハロメタン生成能(THMFP)は,非灌漑期には水道水基準値の100μg/L以下で推移したが,灌漑期にはわずかながら越える場合がみられた。源流の渓流水のTHMFPは平均21.6μg/L,灌漑用の霞ヶ浦用水は平均78.8μg/L,隣接水田の田面水は平均149μg/Lであった。
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背景・ねらい |
水に含まれる有機物は,塩素消毒の際に飲料水で問題となるトリハロメタン(THM)生成の前駆物質となる。水道水のトリハロメタン削減の研究が広く行われているが,農業域にかかわる水のトリハロメタン生成能(THMFP)がどの程度かは把握されていない。本研究は農村集水域を流れ,水道水源となる小河川水のTHMFPを一年間にわたって調査し,その時期的変動と溶存有機物の諸特性との関係を明らかにしようとした。調査河川(帆崎川)は,約270ha(林地45%,畑・樹園地15%,水田22%,耕作放棄地6%,その他12%。また,家畜排泄物の施用・堆積がある)の集水域面積をもち,筑波山の渓流水を源流とし,水稲栽培の灌漑期には霞ヶ浦用水が流入する(図1)。また,集落からの生活雑排水が常時流入する。
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成果の内容・特徴 |
- THMの前駆物質である溶存有機態炭素(DOC)の非灌漑期および灌漑期の平均濃度を表1にまとめた。非灌漑期では渓流水に比べ,中下流部で濃度が高く生活雑排水の影響が考えられ,また,灌漑期は霞ヶ浦用水が強く影響するが,田面水の影響もあると考えられた。
- 非灌漑期のTHMFPの平均値は渓流水17.8,上流部24.8,中流部38.8,下流部44.3μg/Lであり,各々の地点での大きい時期的変動はない。灌漑期は霞ヶ浦用水(平均78.8μg/L)や田面水(平均149.3μg/L)の影響もあり,いずれの地点でも大きくなり,水道水基準値の100μg/Lをわずかながら越える場合もみられた(表1,図2)。
- 単位炭素量(DOC;X1 mg)あたりのTHMFP(Y;μg)は10.2~19.9μgであり,全試料(n=74)について,両者には,Y=13.71 X1(r=0.892)の関係があった。単位化学的酸素要求量(COD;X2 mg)当たりでは10.5~25.5の範囲にあり,全試料について,Y=11.71 X2(r=0.927)の関係にあった。また,水の紫外部吸光度(OD260(光路長1cm);X3)とは最も高い相関(r=0.964)をもち,両者の関係は, Y=995.0 X3 であらわされた(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- THMFPと水の有機物濃度や特性を示すDOC,COD,OD260,特に,OD260とは高い相関をもっており,これらの測定値から,農業用用排水路(小河川)のTHMFPを大まかに推定することができる。ただし,地下水や,畜産廃棄物,食品工場廃液などから直接的に有機物負荷のある河川水では上記関係式を適用できない。なお,関係式は平水時の試料の1.0μmろ過水について得られたものであり,降雨・洪水時の水,あるいは,未ろ過水には適用できない。
- 代かき・移植時を除けば田面水のうち排水される部分はわずかであるので,ここで測定された田面水のトリハロメタン生成能がそのまま公共用水に負荷されるわけではない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
水田
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