タイトル |
ヒガンバナの他感作用とその作用物質リコリンおよびクリニンの同定 |
担当機関 |
農業環境研究成果 |
研究期間 |
1996~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
ヒガンバナ(Lycoris radiata)の葉および鱗茎から,強い植物生育阻害活性を持つ物質を単離した。主成分はアルカロイドのリコリンとクリニンである。リコリンの含有量が最も多く,EC50(50 %生育阻害濃度)はレタス幼根伸長で2ppm,イネ根伸長で15ppmであり,天然物で最強のアブシ ジン酸に匹敵する活性を示す。
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背景・ねらい |
ヒガンバナは古い時代にイネとともに日本に伝来し,わが国の水田畦畔や農業用水路のり面で伝統的に栽培され,畦畔の雑草管理と保護,飢饉の際の非常食糧に利用されてきた植物である。本種の雑草抑制は経験的に知られていたが,作用物質は明かではなかった。そこで,本種の他感作用の実態を明らかにし,葉や鱗茎に含まれる植物生育阻害物質の単離・同定を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 根から滲出する他感物質はプラントボックス法(農業環境研究成果情報,第8集),葉から溶脱する他感作用物質の検定法はサンドイッチ法(同,第14集)により,農地周辺植物を対象に検定した。ヒガンバナには,シュウ酸を作用成分とするカタバミやベゴニアに匹敵する強い作用がある(表1)。
- ヒガンバナ栽培ポットに雑草を播種すると,キク科等の発生を強く抑制するが,イネ科等に対する抑制作用はやや弱い(表2)。
- 80%エタノールを用いてヒガンバナの葉と鱗茎から,植物生育阻害活性物質を抽出,精製し,阻害活性のある10種のアルカロイドを単離した。含有量が最大で阻害活性が最強の成分は,各種NMR,マススペクトル分析の結果,図1に示す構造を持つ化合物リコリンとその誘導体クリニンと同定した。
- リコリンは15ppmでレタス(キク科)の根や地上部の生育を強く阻害し,50%阻害濃度(EC50)は2ppmである(図2)。この活性は天然物質中で最強のアブシジン酸に匹敵する。イネに対しては活性が弱く,EC50は15ppmである。クリニンのレタス根伸長阻害に対するEC50は20ppmであり,他のアルカロイドはさらに活性が弱いことからメチレンジオキシ骨格が活性発現に重要であると推定される。
- ヒガンバナ中のリコリンの濃度は,生の鱗茎中には0.5 mg/g,生葉中には0.3 mg/gである。クリニン含量がこれに次ぐがリコリンの5%以下であり,含有量と活性の強さと作用特性からリコリンがヒガンバナの他感作用の本体であると推定される。
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成果の活用面・留意点 |
リコリンは水溶性が高く,雑草抑制への利用が期待されるが,作物への影響にも留意する必要がある。抗菌・殺虫作用もあり,小動物への影響にも留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
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雑草
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レタス
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