薬剤解毒酵素遺伝子の構造解析及びその発現量比較による抵抗性ワタアブラムシの識別

タイトル 薬剤解毒酵素遺伝子の構造解析及びその発現量比較による抵抗性ワタアブラムシの識別
担当機関 農業環境技術研究所
研究期間 1994~1998
研究担当者
発行年度 1998
要約
ワタアブラムシの有機リン剤抵抗性に関与する解毒酵素(カルボキシルエステラーゼ:CE)cDNAの構造(全塩基配列)を決定した。この配列に基づいて特異的プライマーを設計し,RT-PCRによって抵抗性レベルを異にする系統におけるCE遺伝子発現量を比較したところ,抵抗性系統において著しく増大しており,感受性系統と明確に識別できた。
背景・ねらい
広食性の重要農業害虫ワタアブラムシは,近年各種殺虫剤に対して高度の抵抗性を発達させ防除上大きな問題となっている。本研究では,ワタアブラムシにおける有機リン剤抵抗性のモニタリング手法を開発するため,抵抗性発現の主要因である解毒酵素(カルボキシルエステラーゼ:CE)の活性増大のメカニズムを遺伝子レベルで解明する。
成果の内容・特徴
  1. ワタアブラムシCE-cDNAの全塩基配列を明らかにした(図1)。 配列内には526アミノ酸をコードする1,578塩基のオープンリーディングフレームが存在した。このcDNAが間違いなくCEをコードするものであることは,塩基配列から推定されたアミノ酸配列中にCEモチーフ配列及びCEタンパクからエドマン法によって決定された部分アミノ酸配列が見出されたことで確認された。塩基構成はAまたはTが67%と極めて高い比率を占めていたが,このことの機能的,分子進化的意義等については現在のところ不明である。
  2. cDNAの塩基配列を基に設計したプライマー対を用いて抵抗性レベルを異にする系統について半定量的RT*-PCRを行ったところ,抵抗性レベルの高い系統において特異的増幅産物は明らかに多く(即ちCE遺伝子発現量が多い),感受性系統と明確な識別ができた(図2)。

    *RT: Reverse transcription(逆転写)

成果の活用面・留意点
ワタアブラムシCEをコードする遺伝子(cDNA)の全塩基配列を決定し,PCR法によって遺伝子発現量の違いを検出できることを示した。この成果は,遺伝子診断によるワタアブラムシの抵抗性モニタリングに応用できるものと期待される。
図表1 235103-1.jpg
図表2 235103-2.gif
カテゴリ 病害虫 害虫 抵抗性 防除 モニタリング 薬剤 わた

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