タイトル |
地球温暖化予測情報にもとづく水稲の潜在収量分布の変化 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1997~2002 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
地球温暖化予測情報をもとに局地気候変化データベースを作成した。このシナリオと水稲の生育・収量予測モデルを用いて,地球温暖化過程における水稲の潜在収量の変化を予測した。温暖化に合わせて移植日を決定した場合,水稲の潜在収量は100年後に地域によっては最大15%増加すること,札幌・旭川でもコシヒカリが栽培可能となることが予測された。
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背景・ねらい |
化石燃料の燃焼や土地利用変化によって,大気中の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの濃度が増加し,これによる地球規模での気候変動(温暖化)が予想されている。我々の生活の基盤である農業はこの温暖化の影響を大きく受けることから,将来の農業生産の変化が懸念される。本研究では,温暖化過程における日本の水稲生産の変化について予測した。
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成果の内容・特徴 |
- 大気・海洋結合大循環モデルのCO2漸増実験(大気中のCO2が年率1%の割合で増加すると仮定)結果である気象庁地球温暖化情報を用いて,国土数値情報に基づいた2次メッシュ(10×10 km)スケールの局地気候変化データベースを作成した。この局地気候変化データをもとに,CO2の効果を考慮した水稲の生育・収量予測モデル(SIMRIW;Horie,1995)を用いて,各メッシュ毎に水稲(品種:コシヒカリ)の潜在収量を予測した。
- 現在,コシヒカリが栽培可能な筑後(九州)とつくば(関東)での潜在収量の変化を今後 100年後まで10年毎に予測した。移植日は現行日のままと仮定した場合,筑後とつくばの潜在収量は今後100年間に6 t ha-1から5 t ha-1へ約15%減少する(第1図)。これは,気温上昇のために移植日から出穂日までの長さが短くなり,この期間に吸収する日射量が減少し,乾物重が小さくなることが主な原因である。
- 温暖化に合せて潜在収量を最大にするように苗の移植(田植え)日を決定した場合,現在,コシヒカリが栽培可能な地域では潜在収量は100年後には最大で15%増加する(第2図)。この時,移植日は現行日と比較して,筑後では約95日,つくばでは約40日早くなる。
- 現在,コシヒカリが栽培されていない札幌と旭川では,温暖化に合せて移植日を決定した場合,それぞれ30年後(潜在収量:約2.2 t ha-1),40年後(約3.6 t ha-1)に収穫が可能となる。その後,潜在収量は増加し,100年後にはともに約8.4 t ha-1となる(第3図)ことが予測された。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究で作成した局地気候変化データベースは,温暖化の影響評価に関する多くの研究に利用が可能である。
- この予測結果は,気候変化が水稲の生育と収量にどの様な影響を与えるのかを評価したものである。そのため,施肥や土壌,潅漑条件は水稲の生育にとって最適であり,病害虫などの影響はないものと仮定した。ここで,潜在収量は玄米重で示されており,実際の収量はこの量の約80%である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
害虫
水稲
施肥
データベース
品種
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