タイトル |
微気象学的手法による水田からのメタンフラックスの日変化と季節変化 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1990~1999 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
微気象学的手法(傾度法)を用いて,水田(化成肥料のみ施用,慣行潅漑)からのメタンフラックスを圃場レベルで自然条件下で長期間測定した。フラックスは午後に極大値をもつ日変化を示す。また,地温や湛水状態の変化にともなう季節変化を示す。
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背景・ねらい |
地球温暖化の原因物質であるメタンの大気中の濃度増加の原因究明と濃度増加抑制のため,主要な発生源のひとつである水田からの発生量を正確に把握することが求められている。 本研究では微気象学的手法を用いて,水田からのメタンフラックスを自然条件下で長期間測定し,圃場レベルのメタンフラックスの特徴を把握する。
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成果の内容・特徴 |
- 慣行栽培の水田(農業研究センター谷和原圃場,化成肥料のみを施用)で,移植約1ヶ月後から収穫直前までのメタンフラックスを3作期(1993~1995年)測定した。 微気象学的測定法(傾度法)を適用することにより,静穏夜間(風速約1ms-1以下)をのぞいて,メタンフラックスを圃場レベルで連続的に測定することができた。 なお,傾度法によるメタンフラックス測定の方法やチャンバー法に対する優位性は農業環境研究成果11集に報告済みである。
- メタンフラックスは,午後の早い時刻に極大値をとり夜間は小さくなるという,地温(深さ5cm)と類似の日変化を示した(図1)。フラックスの日合計値(日フラックス)は,中干し期間中の一時的低下をはさんで徐々に増加し,落水にともなう急激な増加後,減少した(図2)。
- 圃場レベルの測定により,チャンバー法で不明瞭であった日変化や季節変化を確認できた。
- 継続して湛水状態にある期間の日フラックスは,日平均地温の上昇とともに指数関数的に増加した。各年のQ10(10℃の温度上昇に対応する発生強度の変化率)の値はそれぞれ3.8,3.3,4.7で,湛水深が80mmと大きかった1994年は,1995年(50mm以下)に比べてQ10の値が小さかった。
- 欠測期間の日フラックスを地温との関係等を用いて補完し,栽培期間を通じてのメタンの総発生量を算出した。総発生量は低温であった1993年が8.7 gm-2でもっとも少なく,高温であった1994,1995年はそれぞれ12.5gm-2,14.8gm-2であった(表1)。1995年は湛水深が浅く,日中の地温上昇が大きかったため,1994年より発生量が多かったと推定される。
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成果の活用面・留意点 |
- 微気象学的手法により長期間メタンフラックスを測定した例はなく,圃場レベルのフラックスとして参照データになる。なお,チャンバー法による栽培期間を通じたメタンの総発生量は,土壌,栽培条件が類似した水田では2~12gm-2(Kannoら,1997)である。
- 微気象学的手法によるメタンフラックスの測定法については研究成果成果第11集に掲載済みである。適用する場合,広く均一な水田で実施する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
栽培条件
水田
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