硝化作用を抑制する熱帯イネ科牧草

タイトル 硝化作用を抑制する熱帯イネ科牧草
担当機関 国際農林水産業研究センター
研究期間 1995~1999
研究担当者
発行年度 1998
要約
熱帯イネ科牧草Brachiaria humidicola は,土壌中のアンモニア酸化細菌の増殖を抑制する。この結果,硝化作用が抑制され,土壌から発生する亜酸化窒素の量も著しく減少する。
背景・ねらい
熱帯の低肥沃度の土壌では,利用できる有機物や肥料が限られているので,作物による窒素の利用効率を高め,出来るだけ硝化作用による窒素の揮散や溶脱を抑える必要がある。もし植物自身が硝化抑制作用を持つなら,窒素の利用効率を飛躍的に高めるとともに,温暖化ガスの一種である亜酸化窒素の大気への放出も抑制することができる。この研究では,ある種の熱帯イネ科牧草が硝化抑制作用をもつことを実証し,そのメカニズムの解明とともに,土壌から発生する亜酸化窒素の抑制効果を検討することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. CIAT(国際熱帯農業研究センター,コロンビア)から入手した3種類の熱帯イネ科牧草(Brachiaria decumbens (Bd),B. humidicola (Bh),Melinis minutiflora (Mm))をポットで8週間生育させ,土壌のみを採取し,硫安を添加後,土壌中の硝化作用を測定した。Bd,Mm区ではアンモニア態窒素が速やかに減少したが,Bh区ではアンモニア態窒素の減少が始まるまで12日間の遅延があり,硝化作用が抑制された(図1)。土壌から発生する亜酸化窒素量は,Bd,Mm区ではともに無植物区と等量であったが,Bh区ではそれらの1/6以下であった(図2)。
  2. 3種類の熱帯イネ科牧草をポットで10日間生育させた後,硫安を液肥として添加し,土壌中のアンモニア酸化細菌数を調べた。3草種の中で,Bh区のみアンモニア酸化細菌の増殖が抑制され,対照区と同様の値を示した(図3)。
  3. 以上の結果により,Brachiaria humidicola はアンモニア酸化細菌の増殖を特異的に抑制し,アンモニア態窒素が亜硝酸態窒素に変わる硝化作用を抑制する。そのため,亜酸化窒素の発生量も著しく減少する(図4)。

成果の活用面・留意点
  1. このBrachiaria humidicola の特異な機能を用いることにより,窒素の利用効率を高め,窒素低投入・環境保全型農業への応用が期待される。
  2. アンモニア酸化細菌の増殖を抑制する物質の同定により,新しい硝化抑制剤の開発が期待される。

図表1 235112-1.jpg
図表2 235112-2.jpg
図表3 235112-3.jpg
図表4 235112-4.jpg
カテゴリ 肥料

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる