タイトル |
水田における農薬濃度変化予測モデルの開発と環境リスク評価 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1997~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
水田に散布された農薬の水田水および水田土壌中の濃度変化予測モデルを開発した。水田水と水田土壌中の農薬濃度の実測値とモデルによる計算値は,良好な一致を示した。このモデルにより算出した農薬の環境中予測濃度を用いることで,より現実的な農薬の環境リスクをスクリーニングレベルで評価できることが示された。
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背景・ねらい |
農薬使用に伴う人の健康や,野生生物に及ぼす影響(環境リスク)を評価するためには,「農薬の毒性の程度」と「人や野生生物が暴露する濃度(環境中濃度)」の把握が必要である。 農薬の環境中濃度の把握には,環境モニタリングにより農薬残留量の測定が行われているが,これにはかなりの時間と労力,経費を要する。このため,農薬の環境中濃度を数理モデルにより予測する試みがなされている。我が国の農耕地の50%以上を占める水田は河川等の水系と直結していることから,水田で使用された農薬による水生生物等への影響を評価するために,我々は水田における農薬の濃度変化予測モデルを開発し,環境中濃度の推定を試みた。
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成果の内容・特徴 |
- 水田に散布された農薬の挙動要因(図1)を考慮し,水田水及び土壌中での農薬濃度の経時変化を求めるコンピュータプログラム(PADDY)を開発した。 水田中の農薬濃度の実測値と開発したモデルによる計算値を比較した結果,両者は良好な一致を示した。(図2)
- PADDYモデルを拡張し,水稲栽培地域の農薬普及率,散布時期,水文条件等を用いて,水田から流出した農薬の河川等における濃度変化予測モデルを開発した。開発したモデルは,河川における実測値の傾向を予測することができた(図3)。
- 従来,農薬の水生生物への影響は急性毒性の強さのみで評価を行っているが,近年,欧米では生態影響を評価する際,「農薬の毒性」だけでなく,通常の使用方法で使用した場合に想定される「環境中予測濃度」を用いて評価する手法が一般的に用いられている。そこで,水田で使用される農薬の河川等における水生生物等への影響を,図4に示すリスク指数を用いることで,より現実的に評価することが可能となった。
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成果の活用面・留意点 |
- 開発したモデルにより,様々な環境条件下における水田中での農薬の挙動を迅速に計算することができるため,農薬の適正な使用条件を選定する有効な手法になるものと期待される。
- 開発したモデルは,水田で使用される農薬の登録事前評価を行う際の,環境リスク評価に利用されることが期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
水田
農薬
モニタリング
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