自然海水を利用したアップウエリングシステムによるアサリ稚貝の飼育技術

タイトル 自然海水を利用したアップウエリングシステムによるアサリ稚貝の飼育技術
担当機関 (独)水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所
研究期間 2006~2010
研究担当者 崎山一孝
山崎英樹
兼松正衛
発行年度 2010
要約 アサリ稚貝を低コストで省力的に生産するために、アップウエリング容器を用いた自然海水の掛流しによる飼育試験を行った。その結果、容器内の海水の交換数を30回/時以上に設定することで、100μm/日以上の成長量が得られることがわかった。また、稚貝の収容密度では、殻長3mmサイズは50万個/㎡、5mmサイズは20万個/㎡、8mmサイズは10万個/㎡の高い密度で飼育可能であることが明らかとなった。
背景・ねらい アサリ稚貝を低コストで大量に生産する方法として、海水中の植物プランクトン等を稚貝の餌として利用する飼育技術の開発が進められている。この方法の一つとして、アップウエリング容器を利用したアサリ稚貝の飼育技術の開発に取り組み、稚貝の良好な成長と生残を得るために必要な容器内の海水の交換数(回/時)と、稚貝の収容密度(個/㎡)を明らかにする。
成果の内容・特徴 アサリ稚貝の飼育水は百島実験施設(広島県尾道市)地先の海水(水温25~28℃、クロロフィル濃度0.5~2.0μg/L)を使用し、飼育容器は小型のアップウエリング容器(底面積28cm2、容積270cm2)を用いた。海水の交換数の試験では、0、3、15、21、40、54、97および167回/時の試験区を設け、平均殻長6.5mmの稚貝を100個ずつ(3.5個/cm2)収容し、12日間の飼育を行った。この試験では、海水の交換数が多いほど稚貝の成長が優れ、100回/日以上の区では平均殻長9.2mm(成長量216μm/日)に成長した。また、天然稚貝と同等の成長(約100μm/日)が得られる海水の交換数は約30回/時であると推察された。
稚貝の収容密度の試験では、平均殻長2.7mmは70、176、353および530万個/㎡、5.1mmは35、106、212および283万個/㎡、7.9mmの稚貝は17、35、70および160万個/㎡の密度で飼育容器に収容し、換水率50%のもとで27日間の飼育を行った。いずれのサイズでも、収容密度が低いほど成長が優れ、平均殻長2.7mm稚貝は6.2mmに、5.1mm稚貝は9.1mmに、7.9mm稚貝は12.8mmに成長した。この試験結果から、100μm/日の成長量が得られる最大密度は、2.7mm稚貝では50万個/㎡、5.1mm稚貝では20万個/㎡、7.9mm稚貝では10万個/㎡であると推察された。
本試験により、自然海水のみでアサリ稚貝を高密度で飼育可能であることが示され、飼育に必要な条件である海水の交換数と、稚貝の収容密度の基準となるデータを得ることができた。
成果の活用面・留意点
  • 栽培漁業センター等の既設の設備や簡易な機材を利用して、低コストで省力的に大量のアサリ稚貝を生産することが可能となる。
  • 稚貝の成長は地先海水に含まれる植物プランクトン等の餌の量や、水温、塩分濃度等の影響を受けると考えられるので、海水の取水場所や水深などに注意を払うが必要がある。
図表1 235124-1.png
図表2 235124-2.png
図表3 235124-3.png
カテゴリ 飼育技術 低コスト

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