海苔スミノリ病に対するバクテリオファージの分離と利用

タイトル 海苔スミノリ病に対するバクテリオファージの分離と利用
担当機関 佐賀県有明水産振興センター
研究期間 2005~2007
研究担当者 三根崇幸
久野勝利
川村嘉応
発行年度 2010
要約 有明海の環境中からスミノリ病原細菌に感染するバクテリオファージを3種類分離し、その性状解析を行った。さらに、分離したファージを用いてノリ葉体に対するスミノリ病感染防除実験を行った。その結果、ファージ処理を行ったノリ葉体では本病の発生が明らかに抑制されたことから、ファージを利用したスミノリ病防除の可能性が示唆された。
背景・ねらい 近年、ノリ養殖では、細菌感染症であるスミノリ病が冷凍網養殖期にしばしば発生し、その生産に多大な被害を及ぼしている。本病の防除対策としては、ノリ網の酸処理が現在行われているが、近年、酸処理の環境や生物に及ぼす影響が懸念されており、酸処理に代わる効果的で環境負荷の少ない防除方法の開発が強く求められている。そこで、スミノリ病原細菌に感染するバクテリオファージ(ファージ)を分離し、その性状を解析するとともに、ファージを利用したスミノリ病の防除を検討した。
成果の内容・特徴
(1)ファージの分離と性状
有明海の海水および干潟の泥中からスミノリ病原細菌Gaetbulibacter sp. H-14LY株に感染するファージの分離を行った結果、3種類のファージ(U1, U2, U3)が分離できた。分離ファージのDNA制限酵素解析および電子顕微鏡観察の結果、U1はMyoviridae科、U2およびU3はSiphoviridae科にそれぞれ分類されることが推察された(図1)。分離ファージの感染からファージ放出が開始されるまでの時間(潜伏期)および感染細菌あたりのファージ放出量を一段増殖実験から求めた。その結果、U2は、短い潜伏期(約30分)で高いファージ放出量(44PFU/infected cell)を有することから、分離した3種類のファージのうち、U2がスミノリ病原細菌に対して最も強い感染力を有することが推察された(図2)。
(2)ファージによるスミノリ病の防除効果
スミノリ病原細菌を人為感染させたノリ葉体に対してファージU2による本病の感染防除実験を行った。細菌接種直後にファージ処理を行ったノリ葉体では、培養7日目に0.4%の原形質吐出が観察されたに過ぎなかったが、無処理のノリ葉体では、培養3日目から原形質吐出が観察され始め、培養7日目には12.2%の原形質吐出が観察された(図3A)。さらに、細菌接種24時間後にファージ処理した場合においても、細菌接種直後に処理した場合と同様な発病防止効果が認められた(図3B)。以上の結果から、ファージによるスミノリ病防除の可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点
  • ファージ処理は、酸処理に代わる環境に優しいスミノリ病防除方法として期待される。
  • ファージ処理を実用化させるためには、基礎的および実用的な試験を積み重ねていく必要がある。
図表1 235129-1.png
図表2 235129-2.png
図表3 235129-3.png
カテゴリ 病害虫 防除

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