タイトル | 異なる塩分で飼育したアユ仔魚の初期の生残率と大きさ |
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担当機関 | 富山県農林水産総合技術センター |
研究期間 | 2005~2007 |
研究担当者 |
田子泰彦 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 初期の減耗が起こると考えられる孵化から15日の間、アユの孵化仔魚を異なる塩分で飼育することによって、塩分の違いによるアユ仔魚の初期の生残率と体長の違いを明らかにした。アユ仔魚の生残率と成長率は、いずれも全海水(32PSU)よりも汽水(8、16および24PSU)の方が高かった。降海時期における河口近辺での汽水域の拡大は、翌年のアユの遡上に良い影響を及ぼすものと考えられた。 |
背景・ねらい | 海域でのアユの生態が一連の研究成果として次第に普及されるにつれ、漁業者などの漁協関係者だけでなく、遊漁者や一般の人からも海産アユ遡上量の予測を望む強い声が聞かれるようになった。海産アユの遡上量の予測は、単に漁業者や遊漁者の当年の漁の期待感を満たすだけでなく、漁協にとっても遡上量の多寡に応じた、より効率的、経済的な種苗放流を可能とする。 本研究では、海産遡上アユ量の予測を行うに当たり、アユ仔魚の主要な生息域である河口海域表層における汽水域の広がりの大小が、アユ仔魚の生残や成長に影響を及ぼすのではないかと考えて、初期の減耗が起こると考えられる孵化から15日の間、シオミズツボワムシを給餌しながら、異なる塩分別にアユ仔魚(実験開始時体長6.7mm)の生残試験を行った。 |
成果の内容・特徴 | 4つの塩分(8,16,24および32PSU)の飼育水槽を4群用い、高水温時(20~24℃)と低水温時(13~16℃)に実験を行った。汽水群飼育群(8,16および24PSU)の生残率は、高水温時だけでなく低水温時においても、海水飼育群(32PSU)のそれよりも有意に高かった(表1)。また、低水温時の海水飼育群の生残率は汽水飼育群の90.4~98.1%に対し、高水温時は24.0~53.7%と低くなった。このことから、アユ仔魚は海水に比べ汽水で飼育した方が生残率が高くなるものと考えられた。また、海水飼育群と汽水飼育群の15日後の体長を比較(生残尾数にそれほど差が認められなかった低水温飼育群で比較)したところ、仔魚の体長は、いずれの汽水飼育群も海水飼育群よりも有意に大きかった(図1)。降海時期における河口近辺での汽水域の拡大は、アユ仔魚の生残率と成長率を高め、遡上量を増大させる可能性がある。4つの塩分(8,16,24および32PSU)の飼育水槽を4群用い、高水温時(20~24℃)と低水温時(13~16℃)に実験を行った。汽水群飼育群(8,16および24PSU)の生残率は、高水温時だけでなく低水温時においても、海水飼育群(32PSU)のそれよりも有意に高かった(表1)。また、低水温時の海水飼育群の生残率は汽水飼育群の90.4~98.1%に対し、高水温時は24.0~53.7%と低くなった。このことから、アユ仔魚は海水に比べ汽水で飼育した方が生残率が高くなるものと考えられた。また、海水飼育群と汽水飼育群の15日後の体長を比較(生残尾数にそれほど差が認められなかった低水温飼育群で比較)したところ、仔魚の体長は、いずれの汽水飼育群も海水飼育群よりも有意に大きかった(図1)。降海時期における河口近辺での汽水域の拡大は、アユ仔魚の生残率と成長率を高め、遡上量を増大させる可能性がある。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究により、海域におけるアユの新たな資源生態学的な知見を得ることができた。また、本成果は、翌年のアユの遡上予測を行う上で、大きく貢献できるものと考えられる。 |
図表1 | |
図表2 | |
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