鳥インフルエンザウイルスのH5, H7遺伝子を幅広く検出するリアルタイムPCR

タイトル 鳥インフルエンザウイルスのH5, H7遺伝子を幅広く検出するリアルタイムPCR
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2008~2010
研究担当者 塚本健司
野口大悟
鈴木耕太郎
宍戸牧子
芦澤尚義
Min-Chul Kim
Youn-Jeong Lee
多田達哉
発行年度 2010
要約 プライマー・プローブに混合塩基を用いることで、H5, H7遺伝子との間の塩基ミスマッチ数が減少し、幅広く、高感度にこれらの遺伝子を検出することができる。
キーワード 鳥インフルエンザ、診断、リアルタイムPCR
背景・ねらい 鳥インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)遺伝子は変異しやすく、血清学的あるいは遺伝学的に16種類の亜型(H1~H16)に分けられている。さらに、HA遺伝子は同一亜型であってもユーラシア系統とアメリカ系統に大別されており、それぞれの系統内に大きな多様性がある。したがって、同一亜型に属す全てのHA遺伝子を漏れなく検出することは難しい。我々は、家禽において検出された場合には殺処分の対象となるH5およびH7亜型ウイルスのHA遺伝子を幅広く検出できる、精度が高いリアルタイムPCR法を開発し、幅広い検出の分子基盤を解明した。
成果の内容・特徴
  1. 多様なH5遺伝子の塩基配列を比較すると、ある部位の塩基が例えばAの株とGの株が混在している場所がある(AT[A, G]CTA……)。その部位に混合塩基であるR(AorG)を用いたプライマーを設計すれば(ATRCTA……)、両株を検出することができる。このような混合塩基を含むプライマー/プローブが使用されているために、本法では多様なH5(50株)とH7(30株)遺伝子を幅広く検出できる。また、他のHA亜型遺伝子(H1~H4, H6, H8~H16, 275株)とは交差せず、特異性も高い。
  2. H5/H7遺伝子の検出限界はそれぞれ102.4(最小値1.5~最大値3.7)、102.7(1.5~3.75) EID50で、混合塩基を用いても感度は低下しない。
  3. プライマー/プローブに混合塩基を含ませれば、多様なH5/H7遺伝子を幅広く検出できるが、混合塩基を含まないとその数は減少し、検出遅延(図では)や未検出(図では)が増える。
  4. 変異が小さく、遺伝子数の基準となるヌクレオプロテイン(NP)の検出後、5サイクル以内で検出されるH5、H7の遺伝子数(図では)は、混合塩基を用いた場合にはそれぞれ19/20、19/19であるが、用いない場合は5/20、10/19と少ない(図)。
  5. H5/H7遺伝子との塩基ミスマッチ数がプライマーまたはプローブ当たり2個以内であれば、遺伝子の検出遅延や未検出は起こらない。
  6. プライマー/プローブに含ませる混合塩基数が5個以内であれば、遺伝子の検出感度や増幅量に影響しない。
  7. 本プライマー/プローブセットは遺伝子バンクに登録されているH5遺伝子(2,112株)とH7遺伝子(607株)のほぼ全てを検出できると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 混合塩基を用いることで、多様なH5/H7遺伝子を幅広く、高感度に検出できるが、プライマー(またはプローブ)との塩基ミスマッチ数が3個以上のH5/H7遺伝子は検出することが難しい。
  2. 検査材料として、尿膜腔液、スワブ、臓器乳剤上清などを使用できる。
  3. 検出限界以下の場合は、発育鶏卵を用いて培養してから再検査する必要がある。
図表1 235180-1.png
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