気候変動下の蒸発散量の変化がメコン川下流域のコメ市場に与える影響と生産余力

タイトル 気候変動下の蒸発散量の変化がメコン川下流域のコメ市場に与える影響と生産余力
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 古家 淳
小林慎太郎
発行年度 2011
要約 メコン川下流域を対象とする気候変動の影響の分析が可能なコメの需給モデルを用いて、気候変動が、メコンデルタ地域のコメ生産量を減少させることを示し、また、灌漑開発計画とモデルで推定された作付面積の比較により、メコン川下流域4カ国各県各地域の生産余力を示した。
キーワード 需給モデル、水供給変動、社会経済シナリオ、灌漑開発
背景・ねらい 水供給量は、気候変動によって変化する。また、2つのコメ輸出国を含むメコン川下流域では経済発展が著しく、一人当たり穀類消費量の減少が予想される。したがって、水供給量の変化が予想されるこれらの国々での農産物需給分析は重要である。この研究の目的は、水に関わる変数を含むコメの需給モデルを用いて、コメの大産地を抱えるメコン川下流域国の農業政策・計画の立案の一助として、水供給の変動がコメの需要と供給に与える影響を明らかにすることである。
成果の内容・特徴
  1. 作物への水供給量に相当する蒸発散量の変動を通した気候変動の影響評価が可能な、メコン川下流域国を対象とするコメの需給モデル(REMEW-Mekong)を分析に用いた。モデルの構造と使用したデータについては発表論文Furuya et al.(2010)を参照されたい。
  2. 次の2つのシミュレーションを行った。1)ベースライン、2)CC_B2(Climate Change for scenario B2)。ベースラインのシミュレーションは、2000年以降の各県・地域の蒸発散量が、1995年から1999年までの平均値のまま変化せず、人口とGDPはIPCCの社会経済シナリオB2の値で変化するものである。ここで、シナリオB2は、経済よりも環境を優先し、かつ地域を重視するシナリオであり、GDPと人口は4つのシナリオの中位にある。一方、CC_B2のシミュレーションは、蒸発散量が、2010年以降シナリオB2にしたがって変化するもので、人口とGDPはベースラインと同一である。ベースラインに対するCC_B2の雨期の蒸発散量は、将来、田植期ではラオスとタイ東北地域において増加するが、開花期では全地域において減少する。
  3. 気候変動は、カンボジアとベトナムのメコンデルタ地域の雨期作のコメ生産量を減少させ、また、タイの東北地域とメコンデルタ地域の乾期作のコメ生産量を減少させる(図1、図2)。
  4. 気候変動は、カンボジア、タイ、ベトナムのコメの生産者価格を上昇させ(図3)、これらの国の消費者の生計を圧迫する。
  5. コメの生産余力を検討するために、メコン委員会の策定した2030年の灌漑開発計画と推定された稲の作付面積を県別・地域別に比較した結果、メコン川西岸域とメコンデルタ地域では、作付面積が上限に達する(図4、%の低い地域が上限に近い)。
成果の活用面・留意点
  1. 各県各地域の生産量等の予測値は、メコン川下流域国の農業生産計画策定の一助となることが期待される。
  2. 気候変動の影響は、蒸発散量の変化のみに限定している。気温や日射量が収量に直接与える影響は考慮されていない。また海面上昇の影響は考慮していない。
  3. 蒸発散量の予測値はメコン委員会がPenman-Monteith法を用いて計算したものであり、IPCCの社会経済シナリオB2に基づく気温や降水量のメコン委員会の気候モデルの予測値から求められている。また、それに合わせて、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナムの人口とGDPもIPCCの公表しているシナリオB2の予測値を用いている。
  4. 作付面積の上限は、メコン委員会の2030年の計画値、あるいは過去最大の作付面積である。
図表1 235283-1.gif
図表2 235283-2.gif
図表3 235283-3.gif
図表4 235283-4.gif
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2011/2011_02.html
カテゴリ 輸出

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