冠水中のイネの光合成活性を簡易に測定できる手法

タイトル 冠水中のイネの光合成活性を簡易に測定できる手法
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 坂上潤一
発行年度 2011
要約 水中でのイネの葉の光合成活性状況をクロロフィル蛍光から把握する技術を開発し、冠水耐性を示すイネの選抜の簡便化を可能にする。
キーワード イネ、冠水、クロロフィル蛍光、光合成、耐性評価
背景・ねらい イネは完全冠水すると弱光と二酸化炭素量の不足により、光合成活性が低下して生育が悪化する。冠水中のイネの光合成活性は溶存酸素量から推定する方法などがあるが、その量は微量で測定は複雑なため、多数の品種のスクリーニングなどには適さない。一方、近年、葉緑体への光エネルギーの受容程度を示すクロロフィル蛍光から、光合成を推測する手法が開発され、イネの冠水抵抗性研究でも応用が試みられている。しかし、冠水したイネの葉のクロロフィル蛍光を直接的に測定した例はない。本研究では、イネの冠水耐性に影響を及ぼす冠水直後の光合成活性について明らかにする目的で、冠水中のイネのクロロフィル蛍光を直接的に素早く簡便に測定し、冠水がイネの生育に及ぼす影響を評価できる手法の開発を目指す。
成果の内容・特徴
  1. Opti-Science社(USA)製の携帯型パルス変調クロロフィル蛍光測定器OS5pのプローブ部分を防水加工し、水中クリップでクロロフィル蛍光の測定に必要な葉面の暗条件を作り出し、順応後にセンサー部を挿入して、水中での葉のクロロフィル蛍光(パラメーターとしてFv/Fm)を短時間(数秒)で測定する(図1)。
  2. 冠水開始直後から感受性品種はクロロフィル蛍光が急激に減少する(図2)。耐性品種は、感受性品種に比べてクロロフィル蛍光減少の始まりが遅い(図2)。また2週間の冠水解除後では、耐性品種は、新葉においてクロロフィル蛍光が回復するが、感受性品種の新葉は冠水期間中に枯死する(図・表なし)。
  3. 葉身のクロロフィル含量も、冠水後に感受性品種が耐性品種に比べて早く減少し、冠水中の葉のクロロフィル蛍光とクロロフィル含量の間には正の相関関係が認められる(図3)。
  4. 冠水中の葉のクロロフィル蛍光と葉緑素計で測定したSPAD値の間には正の相関があり(図・表なし)、本機で測定した水中の葉のクロロフィル蛍光は葉緑体の傷害程度をよく表し、光合成の状態を直接的に反映している。冠水中で葉緑体の傷害を抑えることは、冠水耐性の向上に貢献する。
成果の活用面・留意点
  1. 冠水中の葉のクロロフィル蛍光は、イネの冠水抵抗性の指標として利用できる。
  2. 本機器の利用によって、非破壊で水中の光合成活性程度を簡易に推定することが可能で、冠水抵抗性イネの品種改良や選抜にも効果的に利用されることが期待される。また、同一個体を継続的にモニタリングすることも可能となる。
  3. 本研究成果をプレスリリースし、2011年11月15日付の日本化学工業新聞(「光合成能力測定に成功。耐性品種育種に有望技術」)、同11月18日付の日経産業新聞(「冠水イネの光合成測定」)にそれぞれ掲載されている。
図表1 235287-1.jpg
図表2 235287-2.gif
図表3 235287-3.gif
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2011/2011_06.html
カテゴリ 育種 加工 くり 抵抗性 品種 品種改良 モニタリング

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