広大なマングローブ域は回遊する有用魚類幼魚の餌場として重要な役割を果たしている

タイトル 広大なマングローブ域は回遊する有用魚類幼魚の餌場として重要な役割を果たしている
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 田中勝久
渡部諭史
花村幸生
児玉真史
市川忠史
Alias Man
V-C. Chong
発行年度 2011
要約 フエダイ類の幼魚はマングローブ沿岸域に加入し、成長とともにマングローブ域で生産される餌料への依存を強める。一方、コニベ類幼魚ではマングローブ奥部から沿岸域に移動する。大規模なマングローブ域における餌料の供給と複雑な水路の広がりが水産有用魚類の再生産にとって非常に重要である。
キーワード フエダイ類、コニベ類、マングローブ、安定同位体比、餌料生物、回遊
背景・ねらい 近年の東南アジア地域の増養殖業を取り巻く自然環境の悪化は深刻であり、同地域沿岸域の漁場環境の保全・再生が喫緊の課題となっている。本研究では、熱帯沿岸域における重要な水産資源の生産の場であるマングローブ汽水域における食物連鎖機構や生物相互作用を解明することにより、水産資源の持続的利用のための方策を提言する。マレー半島最大のマタン・マングローブ域(約4万ha)において、有用魚類幼魚とその餌料生物の食物連鎖などを解明するために有機炭素・窒素安定同位体比を調べ、魚類資源に対するマングローブ域の重要性を検討した。
成果の内容・特徴
  1. 魚類の主要餌料生物であるアミ類、アキアミ類では種によって分布範囲が異なり、マングローブ域から、沿岸域にかけて有機炭素安定同位体比(δ13C)が次第に高くなる(図1)。他の餌料生物(エビ類・動物プランクトン・ベントス等)も同様にマングローブ奥部(δ13C:-28~-23‰)から河口、沿岸域にかけてδ13Cは次第に上昇(-23‰以上)する。このような魚類餌料の水域によるδ13Cの特徴を利用して魚類幼魚の行動と餌料生態を解明することができる。
  2. 水産重要魚種であるフエダイの一種(Lutjanus johnii)とコニベの一種(Johnius carouna)の幼魚のδ13Cは採集域毎に大きく異なり、沿岸・河口域で最も高く、マングローブ奥部に向けて低下する。
  3. L. johnii幼魚のδ13Cは成長に伴って減少傾向が認められる(図2左)、一方J. carouna幼魚のδ13Cは成長に伴って増加傾向が認められる。
  4. 魚類とその餌料生物の水域によるδ13Cの変動特性の解析結果からマングローブ域は魚類幼魚への餌料供給の面でも重要であることが示された。L. johniiは成長に伴って河口域からマングローブ奥部へ移動する(図2右)。一方、J. carouna稚魚は成長に伴いマングローブ域から河口域に移動する傾向がある。
成果の活用面・留意点
  1. 水産重要魚類幼魚がマングローブ域での生物生産に大きく依存していることが明らかとなった。本成果はマングローブと水産生物の密接な関係を餌料面から科学的に初めて実証したものとして、資源保護区の設定、漁具漁法の制限などの資源管理手法を検討する上重要な意味を持つ。
  2. 熱帯域魚類の再生産にとって沿岸域・河口域・マングローブ域とつながる複雑な生態系の広がりが非常に重要であり、マングローブ再生にはこの点を十分考慮する必要がある。
図表1 235297-1.gif
図表2 235297-2.gif
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2011/2011_16.html
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