ハネジナマコの飼育管理のためのサイズ測定と栄養状態評価手法

タイトル ハネジナマコの飼育管理のためのサイズ測定と栄養状態評価手法
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2016
研究担当者 渡部諭史
J. M. Zarate
J. G. Sumbing
Ma. J. H. Lebata-Ramos
M. F. Nievales
発行年度 2011
要約 メントール麻酔剤により体型が不定なハネジナマコの体長と体重の測定精度が向上できる。栄養状態により体長と体重が変化するナマコ類は、従来の肥満度による栄養状態の評価ができないが、体腔液の比重と総炭水化物含量を指標として評価できる可能性を示した。
キーワード ハネジナマコ、メントール麻酔、肥満度、体腔液、炭水化物含量
背景・ねらい ナマコ類の資源量は乱獲により激減しているため、人工種苗を用いた養殖や資源増殖が東南アジアおよびオセアニア諸国で行われているが、高い死亡率や遅い成長が問題となっている。生産技術の向上には、飼育方法および餌料の改善ならびに放流適地の選定を行う必要があるが、各技術の有効性の検討のために重要なナマコ類の栄養評価手法は確立されていない。ナマコ類は体型が不定であり、呼吸樹に取り込む海水量で体重が大きく変動することから体長と体重の正確な測定が難しい。また、栄養状態によっても体長と体重の双方が変化するために、栄養状態の指標として貝類などで一般的な肥満度(体重/体長)は利用できない。さらに、絶食下でも代謝レベルを変化させることで長期間の生存が可能であり、サイズは減少するものの、外見に変化は見られない。本研究は、途上地域で食用として高価な重要種であるハネジナマコ(図1)の体長と体重の測定精度の向上と体腔液成分を指標としてハネジナマコの栄養状態を評価する手法の開発を目指したものである。
成果の内容・特徴
  1. エタノールにメントールを飽和溶解させた基準液を海水で2~4%に希釈して20~30分浸漬することでハネジナマコを麻酔し、海水に戻すことで速やかに回復させることができる。麻酔によって筋肉が弛緩し呼吸水の除去が容易になることで、体長および体重の反復測定時の変動係数は麻酔前と比較してそれぞれ68%、43%減少し(図2)、測定精度が向上する。
  2. 開放循環系を持つナマコ類は体腔を満たす体腔液が血液の役割を果たし、ガス交換と栄養物や老廃物の運搬を行う。ハネジナマコでは、絶食に伴い体腔液の密度および体腔液中の総炭水化物濃度が直線的に上昇することから(図3)、これらを栄養状態の指標として用いることができる可能性がある。
成果の活用面・留意点
  1. 本麻酔法は安価、簡便であり使用する薬品の危険性もなく、ハネジナマコのより正確なサイズ測定に供する。
  2. 体腔液成分を指標とした栄養状態評価の可能性が示されたことで、種苗生産におけるナマコ類の初期餌料開発などの各種飼育試験での生理状態の評価に資することが期待される。
  3. 将来的には本評価手法を改良することで高価値種であるハネジナマコの品質評価にも応用できる可能性がある。
  4. 栄養状態と体腔液成分の関係の仕組みは不明である。今後これを明らかにすることでハネジナマコの栄養要求に関する重要な知見が入手できる。
図表1 235298-1.jpg
図表2 235298-2.gif
図表3 235298-3.gif
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2011/2011_17.html
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