低所得農家を対象としたバイオガス発生装置の導入によるCDM事業の国連登録

タイトル 低所得農家を対象としたバイオガス発生装置の導入によるCDM事業の国連登録
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 松原英治
泉 太郎
田港朝彦
飯泉佳子
発行年度 2012
要約 ベトナムメコンデルタにおいて、低所得農家を対象としたバイオガスダイジェスター利用による持続的な農村開発及び温室効果ガスの排出削減を目的としたクリーン開発メカニズム(CDM)事業を形成する手法を開発・実証し、国連へ登録。
キーワード CDM、バイオガスダイジェスター、排出削減、炭素クレジット
背景・ねらい クリーン開発メカニズム(CDM)は、開発途上国(ホスト国)で実施される温室効果ガス(GHG)排出削減プロジェクトで達成される排出削減量を、炭素クレジット化し、先進国がこれを取得することで自国の排出削減目標量に追加できるシステムである。農村開発の一環として、ベトナムにおいて、低所得農家を対象に養豚からの排せつ物からバイオガスを発生させる簡易な装置(バイオガスダイジェスター:BD)を導入し、薪やLPGなどの調理用燃料に代替することで、温室効果ガス(GHG)の排出を削減するCDM事業を形成し、国連気候変動枠組み条約CDM理事会へ登録するまでの手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 途上国の農村地域においてCDM事業を形成する場合、広域に小規模で分散している事業の対象(農家、土地)に、GHG排出削減に係る技術を導入し、排出削減量をモニタリングし、炭素クレジットを獲得することが重要である。本事業では3つの郡に散在する参加農家に対し、拠点となる集落ごとに、BDの技術を身に付け、指導的な役割を果たす農家(キーファーマー)を34名育成し、彼らを中心にBDの設置、維持管理及びモニタリング活動を推進する体制を構築した。
  2. BDの導入によるCDM事業化のためには、事業によりどの程度のGHGが削減可能か算定する必要があり、(1)地域内における木質バイオマス量、(2)BDで代替される既存燃料使用量、(3)再生可能ではないバイオマス(non-renewable biomass:例えば薪に使用される木質バイオマスのうち成長量を上回る部分のバイオマス)量の比率、(4)BDの利用による既存使用燃料の節減量、(5)BDの導入を希望する農家数等について明らかにする必要がある。JIRCASは、共同研究機関のカントー大学とともに、これらについて現地における調査・試験から定量化し、GHG削減可能量を年平均1,203tCO2とし、事業への参加農家961戸を特定した(表1、2)。
  3. このようにJIRCASが形成したCDM事業「カントー市における農村開発に資する農家用バイオガス事業」が、日本及びベトナム両政府からの承認を経て、平成24年8月15日に国連CDM理事会に登録された(図1)。本事業は、農家に経済的なプラスチック製BDを導入することにより、GHGの排出削減を図るもの(図2)で、我が国が形成した低所得農家の生活改善を図るための初のバイオガス利用によるCDM事業である。
成果の活用面・留意点
  1. BDを継続的に利用するためには、JIRCASが作成したマニュアルを参考に、適切な養豚技術とBDの維持管理が行われる必要がある。
  2. 本事業のように小規模な場合、獲得できる炭素クレジットが少量なことから、炭素クレジットの売却益だけでは、事業の形成、登録、資材購入の補助、技術指導、審査・検証等の事業費を賄うことができない。このため、炭素クレジットを購入する企業には、低所得農村への支援に係るCSR(企業の社会的な責任)やBOPビジネス(貧困層を対象としたビジネス)という相乗利益(コベネフィット)に対し、追加投資を行い、売却益の不足分を補うことが期待される。
図表1 235304-1.gif
図表2 235304-2.gif
図表3 235304-3.gif
図表4 235304-4.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2012/2012_05.html
カテゴリ くり モニタリング

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