在来イネ由来のPSTOL1遺伝子はリン酸欠乏耐性を向上させる

タイトル 在来イネ由来のPSTOL1遺伝子はリン酸欠乏耐性を向上させる
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2008~2010
研究担当者 M. Wissuwa
J. Pariasca-Tanaka
R. Gamuyao
J.H. Chin
S. Catausan
C. Dalid
I. Slamet-Loedin
S. Heuer
P. Pesaresi
E.M. Tecson-Mendoza
発行年度 2012
要約 インド型イネ品種「カサラス」に由来するタンパク質キナーゼPSTOL1遺伝子は、これまで見つけられていたリン酸欠乏耐性に関する量的形質遺伝子座Pup1内にあり、冠根の発生と根の総量を増加させることにより耐性発現に貢献する。
キーワード イネ、リン酸欠乏耐性、キナーゼ遺伝子、冠根、カサラス
背景・ねらい リン酸は全ての作物における必須栄養素であるが、リン資源は世界の限られた地域にしか分布していない。作物が使用できるリン酸含量の低い土壌が広く分布するアフリカ、アジア等の開発途上地域では、食料増産の制限因子としてリン酸欠乏が問題になる。近年はリン鉱石の価格高騰、枯渇が危惧されており、土壌中のリン酸を効率的に吸収させ作物収量を高めることが重要になっている。低リン酸土壌でもリン酸を効率的に吸収する在来インド型イネが見いだされており、その遺伝的な機構解明が求められている。
成果の内容・特徴
  1. 在来インド型イネ品種「カサラス」のリン酸欠乏耐性に関与する量的遺伝子座Pup1を含むゲノム領域内に予測される68個の候補から、リン酸の吸収の増大に関与するPSTOL1遺伝子を特定した。
  2. アジアの代表的品種であるIR64(インド型)では、PSTOL1を保有しておらず、本遺伝子をIR64に交配育種により導入した系統は、根長、根重、リン酸吸収量が増加する(図1)。
  3. PSTOL1遺伝子はタンパク質キナーゼをコードしており、冠根の発生する部位で働くことにより、IR64と比較して冠根の発生数を増大させ、その結果として根量とリン酸吸収量の増加が生じる(図2)。
  4. PSTOL1遺伝子を過剰発現させた形質転換イネでは、低リン酸土壌でも収量が向上する(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. リン酸欠乏耐性遺伝子(PSTOL1)は、DNAマーカーを用いて既存品種に導入することが可能である。
  2. JIRCAS、国際稲研究所(IRRI)、アフリカ稲センター(AfricaRice)は共同して、PSTOL1遺伝子を用いたアジア・アフリカ等の低リン酸土壌で耐性を発揮できるイネ品種の育成に着手している。
  3. 新たな品種開発によってリン酸欠乏の問題土壌条件下でも収量を向上できる可能性があるが、PSTOL1遺伝子の収量増に対する効果は、生産力検定試験などで評価を行う必要がある。
  4. 本研究は、国際稲研究所、ミラノ大学、インドネシア、フィリピンの研究者との国際共同研究で行われたもので、JIRCASは解析材料、形質評価、遺伝子分析等を通して貢献した。
  5. リン酸欠乏耐性のより効率的な発現のためには、PSTOL1遺伝子に加え他の遺伝子との関連も考慮した研究が必要である。
図表1 235315-1.jpg
図表2 235315-2.jpg
図表3 235315-3.gif
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2012/2012_16.html
カテゴリ 育種 DNAマーカー 品種 品種開発

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