アサリ浮遊幼生の生残に与えるグリシンの影響

タイトル アサリ浮遊幼生の生残に与えるグリシンの影響
担当機関 (独)水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所
研究期間 2006~2010
研究担当者 兼松正衛
村上恵祐
内田基晴
三好達夫
発行年度 2011
要約 グリシンに対するアサリ浮遊幼生の耐性は発育段階ごとに高くなり、正常発生率と摂餌個体率に悪影響を与えない濃度と浸漬時間は受精卵では1,000ppm濃度で10分、D型とアンボ期では10,000ppm濃度で30分、フルグロウン期では10,000ppm濃度で60分であった。過去2年間の種苗生産事例を比較した結果、平均着底個体率は処理区37.1%、非処理区14.0%となり、グリシン浸漬処理の生残向上効果が確認された。
背景・ねらい 近年、多くのアサリ漁場で浮遊幼生の発生量、親貝の資源量および漁獲量が激減しており、移植放流に用いる天然種苗の受給が逼迫してきたため、代替する人工種苗への要望が急速に高まりつつある。一方、本種の種苗生産過程では、浮遊幼生期の各ステージで急激な活力の低下によりたびたび大きな減耗が発生するため、早期の飼育技術の安定化が望まれている。
成果の内容・特徴 グリシンの浸漬処理がアサリの受精卵と浮遊幼生に及ぼす影響について検討した結果、受精卵では、対照区(無処理)の正常発生率が95.9%であったのに対し、グリシン100ppm濃度では10分~72時間浸漬処理区で同85.0~100%であった。1,000ppm濃度では10分浸漬区以外は全て低下し、10,000ppm濃度では正常なD型幼生は全く得られなかった。D型幼生では、各濃度区とも浸漬時間48時間では同0~21.0%まで低下した。アンボ期では、100ppm濃度×48時間浸漬区で89.1%、1,000ppm濃度×48時間浸漬区で70.0%、10,000ppm濃度×60分浸漬区で90.0%、同×48時間浸漬区では22.3%まで低下した。フルグロウン期では、全ての浸漬処理区で正常発生率の低下は認められなかった(図1)。一方、摂餌個体率に悪影響を与えないグリシンの濃度と浸漬時間は、D型幼生では各濃度とも30分以内、フルグロウン期幼生では60分以内であったが、アンボ期幼生では逆に各濃度とも30~60分で摂餌に好影響を与える結果となった(図2)。
2007~2008年に瀬戸内海区水産研究所・伯方島栽培技術開発センター(現・伯方島庁舎)で実施した種苗生産試験全27事例について、グリシン浸漬処理を行った12事例(グリシン使用区)と行わなかった15事例(対照区)の2群に区分し、着底個体率についてマン・ホイットニーのU検定5)による統計処理を行い、飼育成績を比較した。全く着底稚貝が得られなかった着底個体率0%の試験事例の数は、対照区で8事例(53.3%)であったのに対し、グリシン使用区では1事例(8.3%)であった。対照区の平均着底個体率14.0%(0~55.0%)であったのに対し、グリシン使用区では同37.1%(0~76.6%)となり、順位検定により有意な差が確認された(ρ<0.05、図3)。
成果の活用面・留意点 他の二枚貝類の浮遊幼生期飼育技術への応用が期待される。
グリシンが浮遊幼生の生残と成長に効果を与える機序については、さらに検討が必要である。
図表1 235403-1.gif
図表2 235403-2.gif
図表3 235403-3.gif
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=3332&YEAR=2011
カテゴリ 栽培技術 飼育技術

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