ガザミの種苗生産で発生するメガロパ変態時の大量死の原因究明

タイトル ガザミの種苗生産で発生するメガロパ変態時の大量死の原因究明
担当機関 (独)水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所
研究期間 2012~2012
研究担当者 團 重樹
芦立昌一
発行年度 2012
要約 ガザミの種苗生産で発生する大量死の原因解明を目的に、幼生の形態と種苗生産の生残率の関係を検討した結果、本来消失するはずのゾエアの背中の棘などの特徴がメガロパに残っている場合に生残率が低くなる傾向があった。また、淡水クロレラやナンノクロロプシスなどの植物プランクトンを高密度に添加して飼育した場合に、メガロパの背棘が大きく残留し、重度の形態異常が発生することを明らかにした。
背景・ねらい 増養殖を目的として、毎年4,000万尾以上のガザミの稚ガニが全国で生産されているが、その平均生残率は10%台前半で低い。ガザミは第1齢ゾエアから第4齢ゾエアまで3回の脱皮を経たのち、メガロパへと脱皮し、さらに次の脱皮で稚ガニへと成長するが(写真1)、種苗生産ではメガロパへの変態時に幼生が大量死する現象が頻繁に観察される。そのため、変態時の大量死の原因を検討し、発生原因となっている飼育条件を特定するための実験を実施した。
成果の内容・特徴 幼生の形態と種苗生産の生残率の関係を調査した結果、本来消失するはずのゾエア幼生の背中の棘などの特徴がメガロパに残っている場合に生残率が低くなる傾向があることが明らかになった(図1)。さらに、形態異常の原因を特定するため、様々な飼育条件で幼生を飼育した結果、幼生の餌であるシオミズツボワムシの餌となる淡水クロレラやナンノクロロプシスなどの植物プランクトンをガザミの飼育水に高密度に添加した場合にメガロパの背棘が大きく残留し、重度の形態異常が発生することが明らかになった(図2)。変態時に形態異常が発生するメカニズムを解明するため、甲殻類の重要なホルモンの分泌器官があることが知られている眼柄を切除する実験を実施した。その結果、第3齢ゾエアの後期に眼柄を切除すると植物プランクトンによって引き起こされる形態異常と同じ現象が発生することを突き止めた(写真2)。これらの結果から、ガザミの種苗生産で発生する大量死は、植物プランクトンの過剰な添加により、眼柄から分泌されるホルモンの働きが阻害または攪乱され、形態異常が発生することが原因であると考えられた。
成果の活用面・留意点 種苗生産水槽への植物プランクトンの添加時期や濃度を検討することにより、変態時の幼生の大量死を防ぐことが可能となる。メガロパへの変態時の大量死は、世界中の多くのカニ類で報告されている共通の課題であり、カニ類全体の幼生飼育技術の向上に貢献できる。ガザミ幼生の変態時の形態形成の仕組みに関する知見は、いまだ明らかにされていないカニ類の幼生の変態メカニズムの解明に大きく寄与する。
図表1 235492-1.jpg
図表2 235492-2.gif
図表3 235492-3.jpg
図表4 235492-4.gif
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4265&YEAR=2012
カテゴリ 飼育技術

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