タイトル | シンクロトロン光を利用したケンサキイカの生態解明に関する研究 |
---|---|
担当機関 | 佐賀県玄海水産振興センター |
研究期間 | 2009~2011 |
研究担当者 |
山口忠則 寺田雅彦 江口勝久 大津安夫 野田進治 |
発行年度 | 2012 |
要約 | 壱岐水道で漁獲されるケンサキイカの平衡石をシンクロトロン光による蛍光X線分析で調べたところ、「ブドウ」型と呼ばれる季節群が、平衡石のストロンチウム濃度によって識別できる可能性が示唆された。また、平衡石の輪紋解析により、壱岐水道で漁獲されるケンサキイカの多くが東シナ海でふ化していることが推測された。 |
背景・ねらい | ケンサキイカは佐賀県玄海地区における重要な水産資源であり、かつ重要な観光資源でもある。しかし、近年、季節による漁獲パターンが変化し、漁獲量は不安定かつ減少傾向にある。この漁獲量変動の原因を解明するためには、ケンサキイカの産卵場所、ふ化時期、移動経路などの基礎的な生態と再生産を明らかにすることが必要である。 |
成果の内容・特徴 | 2010年6~11月に壱岐水道で漁獲された外套背長20~25cmのケンサキイカから一対の平衡石を採取し、片方を微量元素分析に、他方を輪紋解析に用いた。 九州シンクロトロン光研究センターのビームラインBL11において蛍光X線分析を行ったところ(図1)、ストロンチウム濃度(ストロンチウムの積算値をコンプトン散乱値で規格化した値)が漁獲時期によって異なり、特に9月と10月以降のサンプルで大きな差が見られた(図2)。秋に漁獲されるケンサキイカは「ブドウ」型と呼ばれる季節群であることから、今回認められたストロンチウム濃度の差は、この季節群の特徴を示している可能性がある。 輪紋解析により、6~11月に壱岐水道で漁獲されるケンサキイカは、前年の秋からその年の春にふ化していることが明らかになった(表1)。ケンサキイカの卵は水温15℃以下ではふ化率が極端に悪いこと、九州周辺では冬季の底層水温がほとんど15℃以下であること、また、秋に九州・山陰沿岸で漁獲されるケンサキイカのメスがほとんど未成熟であることから、漁獲されたケンサキイカのふ化場所は九州周辺の海域ではなく、東シナ海であると推測された |
成果の活用面・留意点 | 今後はEPMA (Election Probe Microanalizer)をもちいて個体ごとのSr/Caの変動を調べ、東シナ海から壱岐水道へ至る移動経路の推定を行う予定である。各季節に漁獲されるケンサキイカの由来が明らかになれば、近年の漁獲変動の原因が解明されるだろう。さらに、東シナ海と日本海におけるケンサキイカの再生産が明らかになれば、資源量評価のための基礎的なデータが得られるようになるだろう。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4113&YEAR=2012 |
カテゴリ | ぶどう |