高病原性鳥インフルエンザに対する点眼ワクチン

タイトル 高病原性鳥インフルエンザに対する点眼ワクチン
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2008~2011
研究担当者 彦野弘一
発行年度 2011
要約 鶏に不活化鳥インフルエンザウイルスを2回点眼投与することにより、ウイルス特異的抗体の産生を誘導し、高病原性鳥インフルエンザに対する防御免疫を付与することができる。
キーワード 高病原性鳥インフルエンザ、粘膜ワクチン、抗体、防御免疫
背景・ねらい 現行の鳥インフルエンザワクチンは、不活化したウイルスをオイルアジュバントと共に皮下または筋肉内に投与する。そのため、ウイルスの侵入部位である呼吸器粘膜での抗体の産生を誘導せず、発症は抑えるが、ウイルスの感染を完全に阻止できない。一般的に粘膜ワクチンは粘膜での抗体の産生を誘導するため、鳥インフルエンザに対してより効果的な防御免疫が誘導できる可能性がある。本研究では、不活化鳥インフルエンザウイルスを点眼または経鼻投与することにより、高病原性鳥インフルエンザに対して防御免疫を誘導できるか否かを検討する。
成果の内容・特徴
  1. 103ヘマグルチニン単位(HAU)の不活化H5N1亜型鳥インフルエンザウイルス(A/chicken/Yamaguchi/7/2004)を4週間隔で2回点眼または経鼻投与したところ、点眼投与された鶏においてウイルス特異的抗体の産生が認められる(HI価の中央値は10)(図1)。
  2. 104HAUの不活化ウイルスを4週間隔で2回点眼投与したところ、より高いウイルス特異的抗体の産生が認められる(HI価の中央値は80)(図2)。
  3. 粘膜アジュバントであるCpG オリゴデオキシヌクレオチド(ODN、50mg)またはコレラトキシン(CT、50mg)を不活化ウイルスと共に点眼投与しても、抗体のHI価は向上しない(Mann-Whitney’s U testにてP>0.05で有意差なし、図2)。
  4. 不活化ウイルスを点眼投与した鶏を致死量のH5N1亜型鳥インフルエンザウイルスの経鼻接種にて攻撃したところ、ほとんどの鶏は生存し、その口咽喉頭および総排泄口スワブからはウイルスは検出されない(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 不活化ウイルスの点眼投与は、現行の皮下または筋肉内投与ワクチンと比較し、高病原性鳥インフルエンザに対してより効果的な防御免疫を誘導している可能性がある。今後は、粘膜における抗体の産生を解析し、また、抗原性の異なる鳥インフルエンザウイルスに対する防御免疫を調べることにより、点眼ワクチンとしての有効性の評価をさらに進める必要がある。
  2. 哺乳類で通常アジュバント効果が確認される濃度の粘膜アジュバントは、不活化ウイルスの点眼投与によるワクチン効果を増強しない。よって、本法の効果を増強するためには、鶏の粘膜免疫に有効なアジュバントを探索する必要がある。
  3. 不活化ウイルスの点眼投与は、オイルアジュバントを用いないため休薬期間が不要であり、肉用鶏にも使用できる鳥インフルエンザワクチンの基礎・基盤技術になる可能性がある。
図表1 235678-1.gif
図表2 235678-2.gif
図表3 235678-3.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2011/170b1_10_07.html
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