ポリメラーゼ系蛋白質の変異による鳥インフルエンザウイルスの病原性増強

タイトル ポリメラーゼ系蛋白質の変異による鳥インフルエンザウイルスの病原性増強
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2006~2011
研究担当者 塚本健司
多田達哉
鈴木耕太郎
岡田浩尚
伊藤寿浩
発行年度 2011
要約 高病原性鳥インフルエンザウイルスは、ポリメラーゼ系蛋白質のわずかな変異や置換によって遺伝子合成能が増強され、鶏病原性を更に高める。
キーワード 鳥インフルエンザ、病原性、ポリメラーゼ遺伝子、馴化
背景・ねらい 東アジアおよびエジプトで流行が続いているH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスは、鶏病原性が極めて高いことで知られているが、その分子基盤は不明である。高病原性のA/chicken/Yamaguchi/7/2004 (H5N1) (CkYM7と略す。) は著しく高い鶏病原性を有し、鶏を迅急性に死亡させる(死亡時間1.5日)が、高病原性のA/duck/Yokohama/aq-10/2003 (H5N1)(DkYK10と略す]の病原性はやや低く、鶏死亡時間も長い(約4日)。このように両株の鶏病原性は大きく異なるが、遺伝学的には近縁で、全アミノ酸配列の相同性は98%と高い。本研究では、リバースジェネティックス法を用いて種々の再集合ウイルスを作製し、それらの鶏病原性、細胞増殖性、遺伝子合成能(ポリメラーゼ活性)を比較することによって、H5N1ウイルスの鶏病原性の分子基盤を解明する。また、カモ由来株のDkYK10を鶏継代して得た病原性増強株(DkYK10-B5)の分子基盤を解析し、鶏馴化機構を解明する。
成果の内容・特徴
  1. CkYM7由来のPB2(PB2Ck)またはNP(NPCk)を持つDkYK10の遺伝子再集合ウイルス(DkYK10-PB2Ck及びDkYK10-NPCk)は親株(DkYK10)よりも鶏を早期に死亡させ、肺で良く増殖し(図1)、強いアポトーシスを誘導する。
  2. DkYK10-PB2CkとDkYK10-NPCkは鶏細胞においてDkYK10より早く増殖するが、アヒル細胞ではこのような違いは認められないことから、PB2CkとNPCkがカモから鶏への鳥インフルエンザウイルスの馴化に関係すると推察される。
  3. PB2CkとNPCkは鶏胚線維芽細胞でのDkYK10のポリメラーゼの活性を高める(図2)。
  4. CkYM7とDkYK10のNPには7個のアミノ酸に相違があるが、このうち105番目のバリン(NP105V)が鶏病原性に関与する主要なアミノ酸で、遺伝子バンク情報の解析からも、この変異が自然界でカモ由来ウイルスの鶏馴化に関与することが示唆されている。
  5. DkYK10を鶏継代して得た病原性のより高いDkYK10-B5の解析から、NPの109番目のアミノ酸がイソロイシンからスレオニンに変異することによって、DkYK10の鶏増殖性(図3)とポリメラーゼ活性(図4)が増強される。
  6. NPの109番目の変異はウイルスを鶏胚の脳で継代すると出現するが、鶏胚の肺では出現しにくい。この傾向は供試した4株全てで確認されたことから、NPやその他の遺伝学的背景が異なっても、ウイルスを脳継代した場合にNPに共通に出現する変異と思われる。
  7. 鶏病原性の増強はNPの変異によるウイルス遺伝子の合成増強に起因しており、特定された2アミノ酸は共にNPのbody domainに位置している(図5)。
成果の活用面・留意点 鳥インフルエンザウイルスは、HAの開裂部位にあるアミノ酸変異によって低病原性から高病原性に変異することが知られているが、高病原性になった後も、遺伝子の合成に関係する蛋白質の変異によって、鶏馴化を進め、鶏病原性をさらに高める。このため、本病が発生した場合には、感染鶏を直ちに殺処分し、ウイルス感染を断ち切ることが重要である。
図表1 235690-1.gif
図表2 235690-2.gif
図表3 235690-3.gif
図表4 235690-4.gif
図表5 235690-5.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2011/170c2_10_18.html
カテゴリ アヒル

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる