タイトル |
細霧ノズル付循環扇を用いた中山間地域向け低コスト細霧冷房システム |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2009~2011 |
研究担当者 |
柴田昇平
日高輝雄
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発行年度 |
2011 |
要約 |
細霧ノズル付循環扇を用いた低コストな細霧冷房システムを用い、時刻と温室内の乾湿球温度をもとに細霧噴霧量を制御すると、夏季日中のハウス内の気温を外気温並みに低下させることができ、高温によるトマト果実収量、品質の低下を抑制できる。
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キーワード |
トマト、高温対策、細霧冷房、循環扇、低コスト
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背景・ねらい |
中山間地域の小規模経営体では、採算性から高価な環境制御機材の導入は難しく、既存の施設に付設可能で安価かつ効果的な高温抑制技術が求められている。
近年になって普及しつつある細霧ノズル付循環扇を用いると、単位面積当たりの細霧ノズル数を大幅に削減しながら、効率的に冷房が行えるシステムを比較的安価に構築できる。しかし、噴霧粒子径が比較的大きいことから、タイマーによるオン・オフ制御だけでは葉の濡れなどの問題が生じる。そこで、温室内の乾湿球温度差から噴霧制御を行う噴霧コントローラによる制御を行い、その導入効果を現地夏秋トマト栽培ハウスで実証する。
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成果の内容・特徴 |
- 開発した細霧冷房システムは、時刻、温室内の気温(乾球温度)をもとに細霧ノズル付き循環扇(図1)の噴霧タイミングを決め、VETH線図より算出した可能噴霧量を乾湿球温度差(湿度)の時間変化に応じ調整し、噴霧量(噴霧時間)を制御する細霧システムである(図2)。2a程度の規模であれば、図2のような片屋根型や一般的な丸屋根型などの温室構造の違いを意識せず自動運転が可能である。
- 本システムは農家自らが設置でき、部材点数も少ないことから維持管理も簡便である。循環扇は気流が循環するように留意して配置する(図2)。初期導入コストは、10aあたり150万円程度を要する一般的な細霧冷房施設装置と比べ安価な100万円未満の水準であり、より低コスト導入が可能である。
- 夏季晴天日に、日中外気温より最大で約6℃高くなるハウス内気温を、本システムにより、ほぼ外気温並みに抑制する制御が可能である(図3)。
- 2010年夏季における記録的猛暑の条件下において、現地ハウスのトマト可販果収量は、細霧冷房を行うことにより、夏季だけでなく秋季にも増収効果が見られ、合計13.6t/10a(対照比105%)の収量が得られ、高温障害果の発生も少ない(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 使用した細霧ノズル付循環扇は、(株)F社MHC-2100であり、10a当たり12台(36万円)を設置する。資材コストは、タンク・電動動力噴霧機(15.2万円)、配管類(20万円)、コントローラ資材(4.6万円)を併せて76万円と概算される。
- VETH線図(Ventilation-Evaporation-Temperature-Humidity線図)は、林らの作成したフリーソフトを使用している。
- 相対湿度が50%以下となる場合、時間あたりの噴霧量が不足することにより、気温上昇抑制効果が低くなることがある。
- 乾湿球温度差に基づく制御により葉の濡れは抑えられるが、完全に防ぐことはできない。ただし、3年間の現地栽培実績では、細霧による葉濡れに起因する病害の発生はない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/warc/2011/141c0_10_04.html
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カテゴリ |
環境制御
経営管理
高温対策
コスト
中山間地域
低コスト
トマト
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