タイトル |
果樹害虫モモノゴマダラノメイガの交尾にはオスの発する超音波が必須である |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2010~2012 |
研究担当者 |
中野 亮
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発行年度 |
2012 |
要約 |
モモとクリの難防除害虫であるモモノゴマダラノメイガは、交尾時にオスが超音波パルスを発する。メスが交尾を受入れるための姿勢は、オスの超音波に反応して引き起こされることから、オスの発音を受容できないと交尾が成立しない。
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キーワード |
モモノゴマダラノメイガ、超音波、音響交信、配偶行動
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背景・ねらい |
チョウ目昆虫の大部分は鼓膜器官を有し、一般に超音波に対して忌避行動を示す。この行動反応を利用した超音波による害虫防除技術の開発を目指し、チョウ目害虫の農作物への飛来・侵入を阻害できる超音波特性を解明する。チョウ目害虫が忌避する音を効率的にスクリーニングするため、交尾時における音響交信に着目し、記録された音響信号の機能解析によって、受信者が好む音・嫌う音・無視する音の鍵となる特性を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- モモノゴマダラノメイガのオスは、暗期後半にメスの元へ飛翔しながら接近し、メスの周囲で超音波を発する。1cmの測定距離における音圧は103dBSPLであり、チョウ目昆虫が交尾時に発する超音波としては大きな音圧である。発音は、前半部が持続時間14-47ms(平均28ms、n=24)の短いパルス、後半部が102-860ms(平均174ms、n=66)の長いパルスで構成され、これらは持続時間が非常に短い(0.1ms以下)クリックの集合である(図1a)。周波数帯域は40?120kHzと広く、そのピークは82kHzである(図1b)。
- 本種はオスのみが発音し、中胸の側方部にオス特異的な振動膜からなる発音器官を持つ。また、鼓膜器官は雌雄ともに腹部の第一節にある。
- 配偶行動連鎖は以下の通りである。オスがメスに接近して発音すると、メスは翅を背側に立て、その直後にオスがメスの近傍に着地して交尾器を結合する。メスが翅を立てない場合、オスは着地せず、交尾に至らない。すなわち、メスの翅立て行動が交尾の受入れを表すものと考えられる。鼓膜器官を破壊したメス、もしくは発音器官を破壊したオスでは、メスの翅立て行動が引き起こされない(図2a)。これにともない、メスの鼓膜器官、もしくはオスの発音器官を破壊すると、交尾することができない(図2b)。
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成果の活用面・留意点 |
- オスの発する超音波は、メスによる交尾の受入れ(翅立て行動)に関するメスからの性選択圧を受けていると考えられる。したがって、メスの翅立て行動を特異的に引き起こす超音波のパルス構造(パルス長とパルス間間隔)と類似する音は、合成超音波を用いた害虫防除技術として不適である。一方、周波数は本種が検出しやすいものに淘汰されているため、40-120kHzの超音波を防除に活用することは適当と推察される。しかしながら、メスの翅立て行動を引き起こす超音波のパルス構造は、現時点では明らかになっていない。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2012/152b0_02_05.html
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カテゴリ |
病害虫
害虫
くり
防除
もも
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