タイトル | サルボウの成長に及ぼす貧酸素の影響 |
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担当機関 | 佐賀県有明水産振興センター |
研究期間 | 2012 |
研究担当者 |
中牟田 弘典 |
発行年度 | 2013 |
要約 | 貧酸素曝露3、7日目および各曝露後に7日間の養生を行ったサルボウの鰓の状態と曝露・養生後のろ水速度、体腔液のプロピオン酸含有量および鰓・腎臓の組織との関係を調べた。この結果、貧酸素曝露期間が長いほど、鰓の損傷レベルが高まり、ろ水速度が低下する傾向が確認された。また、損傷レベルが高いほど、鰓糸上皮細胞および腎細胞の退縮が進行していることが観察された。 |
背景・ねらい | サルボウの漁獲量は、近年、夏季の小潮期を中心に発達する貧酸素水塊による大量斃死のため、漸減傾向となっている。このため、本県では、サルボウ漁場環境の斃死リスク要因を数値化し作成したリスクマップを基に移植等による管理手法を提案している。 貧酸素による斃死リスクの高い漁場(移植元)からリスクの低い漁場(移植先)への移植試験において、海域の貧酸素化はサルボウを斃死させるのみでなく、その後の成長を停滞させていることが示唆された。ここでは、成長停滞の要因を貧酸素曝露下におけるサルボウのろ水速度、体腔液のプロピオン酸含有量の測定および鰓・腎臓組織の観察結果から検討した。 |
成果の内容・特徴 | (1)貧酸素曝露期間が長いほど、鰓損傷レベル(鰓の損傷度)が高まること、損傷レベルが高いほど、ろ水速度が低下する傾向があることが明らかになった(図1,2)。 (2)鰓に軽度の損傷を受けた個体(損傷レベル2相当)については、7日間の養生により、ろ水速度が回復することが示唆された(図1,2)。 (3)上記ろ水速度測定個体の鰓および腎臓組織のヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)像を鰓損傷レベル毎に比較すると、鰓については、損傷レベルが高まるほど、鰓糸上皮細胞の退縮が進行していることが、腎臓については、茶褐色顆粒の沈着と腎細胞の退縮が観察された(図2,3)。 (4) ろ水速度測定(3時間の通気飼育)後の鰓損傷判断において、損傷レベル3もしくは損傷レベル2で腎細胞の退縮が認められた個体では、ろ水速度測定後の体腔液からプロピオン酸が検出された。 (5)以上のことから、貧酸素による成長の停滞は、鰓組織の異常に伴うろ水速度の低下、更には、腎機能の低下も関与している可能性が示唆された。 |
成果の活用面・留意点 | 貧酸素によるサルボウの成長停滞の要因は、鰓組織の異常に伴うろ水速度の低下、更には、腎機能の低下も関与している可能性が示唆されたことから、サルボウの成長停滞リスクマップの作成と、それに基づく管理手法の検討が必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4584&YEAR=2013 |
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