タイトル | 格子状基盤を使用したサンゴ増殖技術開発―幼生への褐虫藻添加の影響について― |
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担当機関 | (独)水産総合研究センター 西海区水産研究所 |
研究期間 | 2011~2015 |
研究担当者 |
鈴木 豪 山下 洋 林原 毅 |
発行年度 | 2013 |
要約 | 亜熱帯沿岸での健全な漁場環境の修復・維持を目指し、サンゴ幼生の放流による大規模なサンゴ増殖技術の開発を目指している。幼生放流において最大の障壁となる「着底直後の初期減耗」を軽減するため、幼生飼育時の褐虫藻添加および格子状基盤への人為的着生によって、生残率の大幅な向上に成功した。 |
背景・ねらい | わが国の亜熱帯沿岸域では、サンゴ礁が重要な漁場のみならず水産重要種の保護育成場としても大きな役割を担っている。しかし、近年、白化現象やオニヒトデの大量発生による減少が著しく、効果的な修復保全策が求められている。そこで、我々の研究グループでは、サンゴ幼生を人為的に基盤上に着生させて、低コストで大規模にサンゴ群集を修復する技術の開発を目指してきた。本研究では、特に、サンゴの成長・生残に不可欠な「褐虫藻」を人為的に導入することで、生残を向上させられるかどうかを試した。 |
成果の内容・特徴 | サンゴ幼生は、平坦な基盤上に着生すると、数か月以内にほとんどの個体が死亡してしまう(3か月後の生残率は1%以下)ことが障害となっていた。それに対し、格子状の基盤に着生させることで、魚類による被食や堆積物の影響を防ぎ、高い生残(約6か月後で10%以上)を確保することが可能となった(図1)。さらに、サンゴ幼生の飼育時に、サンゴに取り込まれやすい特定の褐虫藻を添加して、異なる水深帯(5~18m)と異なる光条件(遮光板ありvsなし)で、着生後の生残を1年間比較した。すると、褐虫藻を添加した場合、サンゴの生残は最大で20%程度まで上昇し、添加効果が確認された。特に、遮光条件下(150μmol/m2/s以下)で添加効果が大きかった。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究成果により、有性生殖を利用したサンゴ増殖技術が実用的な段階へ移行することができた。具体的には、水産資源にとって重要な特定のサンゴ種を狙って、早期に回復させることが期待される。今後は、本成果を活用し、ハタ類等の稚魚育成場として重要な枝状サンゴ群集の修復事業を進めていく予定である。 |
図表1 | |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4623&YEAR=2013 |
カテゴリ | 亜熱帯 低コスト 光条件 |