メコンデルタ洪水常襲稲作地域におけるフルダイクの普及と水文環境への影響

タイトル メコンデルタ洪水常襲稲作地域におけるフルダイクの普及と水文環境への影響
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2012
研究担当者 藤井秀人
藤原洋一
星川圭介
横山繁樹
発行年度 2013
要約 メコンデルタの洪水常襲稲作地域を対象に稲3期作化のためのフルダイク(輪中)の普及が水文環境に与える影響を分析したところ、フルダイク地区の周辺域で洪水の長期化や水位の上昇傾向が認められる。
キーワード フルダイク,洪水常襲地域,稲3期作,気候変動,洪水緩和機能
背景・ねらい メコンデルタは世界第2位の米輸出国であるベトナムの輸出米の90%を生産する稲作地域であるが、気候変動の影響を最も強く受けるメガデルタの1つとして危惧されている。メコンデルタの洪水常襲稲作地域における稲3期作のためのフルダイクの普及が周辺地域の水文環境に与える影響について、住民や行政機関からの聞き取り、衛星画像と河川水位の分析から明らかにし、増大する洪水リスクに適応し、持続可能な稲作の基盤となるダイクシステム構築のための基礎的知見を提供する。
成果の内容・特徴
  1. メコンデルタ洪水常襲地域では毎年の氾濫に対応した稲作のため,洪水を完全に防ぐ堤高の高いフルダイクと、夏秋作の収穫期(8月)までの洪水を防ぎ収穫後は農地への洪水の流入を許容する堤高の低いセミダイクが建設されている(図1)。フルダイクに囲まれた農地では氾濫期間(8~11月)でも水稲が作付けでき3期作が可能となるため、農家の強い要望とアンジャン省とベトナム政府の方針に基づき、ここ10年間で急速にフルダイクが普及し3期作が拡大している(図2)。
  2. フルダイク普及前の2000年洪水(60年確率)とフルダイク普及後の2011年洪水(10年確率)について、MODIS Terraの画像を比較すると2011年洪水において、フルダイク地区の上流に位置するカンボジア(B地点)やアンジャン省の西側下流に位置するキエンジャン省(A地点)などにおいて、規模の大きかった2000年洪水よりも湛水域が拡大し、湛水期間が長期化しているとことが認められる(図3)。検証のため、図3から、大幅に長期化した地点(a)、若干の長期化が認められる地点(b)、あまり変化が認められない地点(c)で聞き取り調査を実施し、衛星画像から得られた湛水期間の変化と農家の感触は良く一致していることを確認している。
  3. メコン河本川の1つであるハウ川のカントー地点の水位が近年上昇傾向にあることが水位分析から示されている。アンジャン省上流のチャウドックとカントー市カントーにおける1979~2011年の年最大水位を2004年以前と2005年以降に分けて比較すると、2005年以降はそれ以前と比較してカントーの水位の上昇傾向が認められる(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 気候変動で洪水リスクが増大するメガデルタ地域の適応策の検討に活用できる。
  2. メコンデルタのフルダイク普及と温暖化による洪水湛水域の変化を水文・水理モデルで評価する際の検証データとして活用できる。
  3. カントー地点の水位上昇の原因は全てがフルダイクの影響ではなく、温暖化による海面上昇や都市部の地盤沈下の影響も考えられ、今後より詳細な調査が必要である。
図表1 236334-1.jpg
図表2 236334-2.jpg
図表3 236334-3.jpg
図表4 236334-4.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2013/2013_A04.html
カテゴリ 水稲 輸出

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