新規硝化抑制剤としての脂肪酸および脂肪酸メチルエステルの同定

タイトル 新規硝化抑制剤としての脂肪酸および脂肪酸メチルエステルの同定
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 Subbarao, G.V.
中原和彦
石川隆之
吉橋 忠
小野裕嗣
亀山眞由美
吉田 充
発行年度 2013
要約 各種脂質のうち脂肪酸のリノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、および脂肪酸エステルであるリノール酸メチルはある種の土壌微生物の働きによるアンモニアから硝酸が生成される過程、すなわち硝化(硝酸化成)を強く抑制する。リノール酸メチルは、α-リノレン酸やリノール酸よりも硝化抑制活性が強く、残効性も長い。
キーワード リノール酸、リノール酸メチル、リノレン酸、脂肪酸、硝化抑制
背景・ねらい ある種の土壌微生物の働きによるアンモニアから硝酸が生成される過程、すなわち硝化(硝酸化成)は、農業や園芸などの生産に用いる窒素肥料の大幅な損失を引き起こし、土壌環境汚染の原因ともなっている。このような土壌の硝化を抑制するため、従来、主にニトラピリン(2-クロロ-6-トリクロロメチルピリジン)やジシアンジアミド等の合成硝化抑制剤が用いられてきた。これらのうち、ニトラピリンは揮発性が高く、地温が20°C以上の条件ではほとんど効果がないため、北米の冬季作等、限られた環境でのみ使用可能であった。一方、ジシアンジアミドは、ニトラピリンに比較して高い温度でも有効であるが、使用濃度が高く、かつ高価であることから農業生産コストに大きく影響するため、利用されている地域は限られている。また、これらの使用は安全性の面で懸念がある。このような背景から、熱帯から温帯にかけての広い地域で利用可能であり、経済的で安全な硝化抑制剤の開発が求められている。
成果の内容・特徴
  1. 各種脂質のうち脂肪酸のリノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、および脂肪酸エステルであるリノール酸メチルは、硝化細菌Nitrrosomonas europaeaの代謝活性を強く阻害する。上記4物質の活性阻害率は20 ppmの濃度で95%である(図1、2)。
  2. 他の脂肪酸のステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、アラキドン酸、そして脂肪酸エステルのリノール酸エチル、α-リノレン酸メチルでは阻害活性はみられない。
  3. リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、リノール酸メチルの80%阻害濃度(ED80)は、それぞれ16、12、16、8 ppmである。なお、合成硝化抑制剤であるニトラピンは4 ppmであり、ジシアンジアミドは185 ppmである。
  4. リノール酸、α-リノレン酸、リノール酸メチルは土壌中でのアンモニアからの硝酸の生成、すなわち硝化を強く抑制する(図3)。α-リノレン酸とリノール酸メチルは、リノール酸よりも硝化抑制活性が強く、残効性も長い。特に、リノール酸メチルは、硝化抑制する能力が高い。
成果の活用面・留意点
  1. リノール酸、α-リノレン酸、リノール酸メチルは、室内試験で土壌中の硝化を抑制することから、ジシアンジアミド等に代わる硝化抑制剤として実用化が期待できる。
  2. リノール酸、α-リノレン酸、リノール酸メチルの圃場レベルでの硝化抑制効果は未検討であることから、今後、実験によりその確認が必要である。
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図表2 236336-2.jpg
図表3 236336-3.jpg
図表4 236336-4.jpg
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図表6 236336-6.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2013/2013_A06.html
カテゴリ 肥料 コスト 土壌環境

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