飛翔力の強い甲虫媒のフタバガキ科樹種が健全に種子生産できる択伐基準

タイトル 飛翔力の強い甲虫媒のフタバガキ科樹種が健全に種子生産できる択伐基準
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2015
研究担当者 谷 尚樹
津村義彦
Norwati Muhammad
Lee Soon Leong
発行年度 2013
要約 JIRCASが開発した繁殖モデルを適用し、現地でバラウと呼ばれ低地フタバガキ林に生息する飛翔力の強い甲虫媒の有用樹について、熱帯樹木の択伐基準を考慮する際に重要な自然交配が可能になる花粉散布パターンを決定した。飛翔力の弱いアザミウマ媒の有用樹レッドメランティよりも送粉効率が高く、択伐基準はレッドメランティよりも緩和できる。
キーワード フタバガキ、択伐施業、花粉散布、天然更新
背景・ねらい 生物多様性の宝庫である熱帯雨林では、択伐と呼ばれる一定以上の大きさの木を収穫する手法で天然林から木材が生産されている。しかし、この手法が持続可能であり、豊富な生物資源を維持しているかを検証された例は少ない。JIRCASでは健全な種子生産を維持するための花粉散布パターンの研究を丘陵林に分布するフタバガキ科の有用樹レッドメランティ(Shorea curtisiiS. leprosuraなどに対する産地別取引名)で行ってきた。研究例の多いレッドメランティの中でも、ムティカ節に属する樹種は微小な花を持ち、花粉は飛翔力の弱いアザミウマによって散布される。しかし、フタバガキ科樹種は花の形態が異なる分類群毎に様々な昆虫と共生関係にあり、その共生関係毎に健全な種子生産に必要とされる異なる管理基準を設定することが望ましい。そこで大型の花を持ち、主に甲虫類によって花粉が散布される有用樹バラウ(Shorea maxwelliana)の花粉散布パターンを繁殖モデル(国際農林水産業研究成果情報 第19号)で推定し、択伐の影響を評価した。バラウは蓄積量がレッドメランティの約2割と乏しいが、高価値材を産出し資源の枯渇が危惧される樹種の一つである。
成果の内容・特徴
  1. 飛翔力の強い甲虫に花粉散布を依存しているため、一斉開花規模で生じる開花密度の違いが花粉散布に及ぼす影響は小さい(図1)。
  2. 大規模開花年では種子生産に寄与する花粉親の数が多く、大規模開花年にはより遺伝的に多様な種子が生産されている(表1)。
  3. アザミウマ媒のレッドメランティよりも甲虫媒のバラウは択伐による花粉散布パターンへの影響が小さい。択伐基準としては、他殖花粉の半減率を用いた場合、レッドメランティでは胸高直径が80cm以上の立木のみを伐採できるが、バラウではこの値は60cm以上と推定される(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. S. maxwellianaはマレー半島の他、ボルネオ島にも広く分布している。特にボルネオ島では蓄積量も多く、我が国をはじめ海外への輸出も多い。その点で本成果はマレーシアの他、インドネシアへの波及効果も期待できる。
  2. 花粉散布パターンは送粉昆虫と開花個体密度に依存する。ボルネオ島とマレー半島では同じ樹種で異なる送粉者が観察された事例がある。樹種の個体密度が大きく異なる事例もある。このような場合、択伐シミュレーションで推定した値と、実際の結果が異なる場合が生じる。
図表1 236354-1.jpg
図表2 236354-2.jpg
図表3 236354-3.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2013/2013_C09.html
カテゴリ ばら 繁殖性改善 輸出

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