有機質肥料活用型養液栽培システム

タイトル 有機質肥料活用型養液栽培システム
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2010~2013
研究担当者 篠原信
藤原和樹
佐藤達夫
高野雅夫
小川順
森川信也
三好博子
種村竜太
桝田泰宏
中村謙治
仲谷端人
発行年度 2013
要約 有機質肥料活用型養液栽培は、硝化特性に優れた微生物生態系を用いることで有機質資源を肥料として利用する新規栽培法である。青枯病菌や根腐萎凋病菌が培養液中に混入しても環境が適さないため増殖しない。本法は根部病害に強い養液栽培法である。
キーワード 有機質肥料、養液栽培、根部病害、微生物
背景・ねらい 慣行の無機養液栽培に有機質肥料を用いると分解が十分に進まず、腐敗により発生した成分が根に損傷を与える。また、培養液に病原菌が混入すると根部病害が広がりやすいため、培養液の殺菌処理などが不可欠である。さらに、化成肥料は原料となる地下資源の枯渇が懸念され、価格も高騰している。そこで、有機質肥料の利用を可能とする微生物生態系を培養液中に構築することで培養液や栽培装置の殺菌を不要とし、肥料成分を系外に出さずに培養液を循環させることができる新たな養液栽培技術を開発・実用化する。
成果の内容・特徴
  1. 硝化特性に優れた微生物から調製した種菌(市販予定)を使用することで、有機物から硝酸イオンへの分解を効率的に進めることができる。培養液1Lに対して種菌、有機質肥料(カツオ煮汁またはトウモロコシ浸漬液)、カキ殻石灰をそれぞれ1gずつ添加して1週間栽培装置の中で培養液を循環させる。硝酸イオンが検出されたら定植が可能な状態となる(図1)。
  2. 栽培期間中は作物が1日に吸収する量の有機質肥料を毎日添加する(日施用)。開発した自動追肥装置を用いると、粘度の高い有機質肥料も培養液に自動添加できる(図1)。肥料コストを低減しながら無機養液栽培と同じ栽培装置を利用することができる。収量は無機養液栽培と同等であり、硝酸含量やアミノ酸含量の品質で優れている(表1)。
  3. 青枯病菌(Ralstonia solanacearum)を培養液に添加すると、無機養液栽培では青枯病菌が増殖しトマト株が枯死するが、有機質肥料活用型養液栽培では培養液中の環境が病菌の増殖に適さないため青枯病菌は検出されず(図2)、罹病株も発生しない。
  4. トマト根腐萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. radicis-lycopersici)を培養液に添加すると、無機養液栽培では全ての苗が罹病するが、有機質肥料活用型養液栽培では病原菌の菌密度が上昇せず、罹病株も認められない(図3A、図3B)。レタス根腐病(病原菌:F. oxysporum f. sp. lactucae)でも同様の結果である(データ省略)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:野菜生産者、植物工場、公立研究機関および普及センター
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国、養液栽培施設の2割程度(300ha)の導入を目指す。また、海外からの問い合わせもある。
  3. その他:種菌は京都大学・大和化成(株)が開発し技術移転されたメーカーから市販予定、自動追肥装置はエスペックミック(株)が販売中である。使用する有機質肥料は本研究で検討済みのカツオ煮汁あるいはトウモロコシ浸漬液である。水質や栽培装置、栽培時期などで結果が異なることが予想される。品目ごとに栽培マニュアルを参照し、その技術開発機関に相談することが望ましい。
  4. 市販予定の種菌から人体に影響のある系統を含む大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターは検出されない。栽培期間中の培養液に病原性大腸菌を灌注しても増殖しない。
図表1 236510-1.jpg
図表2 236510-2.jpg
図表3 236510-3.jpg
図表4 236510-4.jpg
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図表8 236510-8.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2013/13_040.html
カテゴリ 土づくり 肥料 青枯れ病 コスト 栽培技術 とうもろこし トマト 養液栽培

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