成長ホルモン遺伝子のハプロタイプによるイノシシ集団中のブタ遺伝子の検出

タイトル 成長ホルモン遺伝子のハプロタイプによるイノシシ集団中のブタ遺伝子の検出
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2012~2013
研究担当者 小林栄治
発行年度 2013
要約 成長ホルモン遺伝子のハプロタイプを判定することによりイノシシ集団中のブタ遺伝子が検出可能であり、ミトコンドリアDNAの簡易判定情報と合わせることでより詳細にブタ遺伝子の流入状況が把握できる。
キーワード 成長ホルモン遺伝子、SNP、ハプロタイプ、ブタ、イノシシ
背景・ねらい 近年、イノシシによる農作物の被害が多発している。イノシシとブタは交配が可能であることから、イノシシにブタの遺伝子が流入し、被害が拡大する恐れがある。福島県では、原子力発電所周辺の避難地域にある養豚農家からブタが逃亡し、イノシシと交雑しているとの危惧も生じている。イノシシの生息数の増加や生息地域の拡大が問題であることから、各地で捕獲調査が進められている。野生イノシシ集団へのブタ遺伝子の流入状況を正確に把握するため、これまでミトコンドリア(mt)DNAおよび第1番染色体上のGPIP遺伝子によりイノシシとイノブタ(イノシシとブタの交雑)の判定が行われてきたが、他の染色体についてもイノシシとブタを厳密に識別するマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
  1. イノシシやブタの成長ホルモン(GH)遺伝子は、5か所の一塩基多型(SNP)から10種類の組み合わせ(ハプロタイプ)が構成される。
  2. 関東から九州地域で捕獲されたイノシシには、GH遺伝子のSNPの分析から、5種類のハプロタイプが検出され、それらはヨーロッパ型とアジア型に分類される(表1)。
  3. GH遺伝子のハプロタイプは、中部から近畿、中四国地域ではアジア型のみ観察され、関東および九州地域ではヨーロッパ型も検出される(表1)。
  4. mtDNAの多型のうち3か所のSNPは、ミスマッチプライマーと3種類の制限酵素を用いたPCR-RFLP法により、ブタとイノシシのタイプを簡易に判定できる(図1)。
  5. 群馬および宮崎で捕獲されたイノシシにはヨーロッパ型が観察され、イノシシ個体のGH遺伝子およびmtDNAを分析することにより、流入したブタ遺伝子を比較的容易に検出できる(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. GH遺伝子にはヨーロッパ型、共通型およびアジア型の3つに大別され、イノシシはアジア型のみを持つことから、イノシシ集団のアジア型以外のタイプを検出することによりブタ遺伝子の流入を検出できる。
  2. 個々のSNP単独では、ブタとイノシシを区別できないため、複数のSNPからハプロタイプを構成する必要がある。
  3. 本手法ではGH遺伝子(第12番染色体)およびmtDNAを分析するため、各個体の厳密な判定には他の染色体上の遺伝子も調査する必要がある。
図表1 236551-1.jpg
図表2 236551-2.jpg
図表3 236551-3.jpg
図表4 236551-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2013/nilgs13_s14.html
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