成熟培地中へのブタLIF添加はブタ卵子の成熟率を有意に上昇させる

タイトル 成熟培地中へのブタLIF添加はブタ卵子の成熟率を有意に上昇させる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2012~2013
研究担当者 原口清輝
Thanh Quang Dang-Nguyen
Tamás Somfai
永井卓
菊地和弘
Szilárd Bodó
発行年度 2013
要約 食肉処理場由来ブタ卵巣から採取した卵子卵丘細胞複合体の成熟過程において、培地中にブタLIFを添加すると卵子および卵丘細胞のSTAT3が活性化され卵成熟率が有意に上昇する。さらに胚盤胞の発生率および総細胞数も上昇する傾向が認められる。
キーワード ブタ、IVP胚、LIF、STAT3、卵成熟
背景・ねらい 体外で作出された(in vitro produced: IVP)ブタ胚盤胞は、体内発育胚盤胞と比較すると内部細胞塊が不明瞭かもしくは識別不可能である。これはブタIVP胚の作製、培養法が完全ではないことを意味する。高品質IVP胚の大量生産は生殖工学技術の根幹をなすものであり、ブタにおいては医学における再生医療分野や、養豚業における品種改良等に期待がもたれる。白血病阻止因子(leukemia inhibitory factor, LIF)は、白血病細胞の増殖を阻害してマクロファージ様細胞に分化誘導するサイトカインとして発見された。LIFは、マウス胚性幹細胞(embryonic stem cell, ES細胞)や我々が樹立したブタES様細胞株の分化抑制作用(未分化状態の維持)も持つが、それ以外にも多くの機能を有している。そこで、ブタ卵子および卵丘細胞におけるLIF/STAT3シグナル伝達経路の存在を確認し、組換えブタLIF(rpLIF)がブタ卵子の成熟率および胚盤胞発生率におよぼす効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 成熟培地への1,000U/mL rpLIFは、ブタ卵子の成熟(核成熟)、卵丘細胞の膨化を促進する((表1, 図1)。
  2. rpLIF添加培地で成熟したブタ卵子は、無添加培地で成熟した卵子に比べ、受精率(93.2%vs.90.8%)、胚盤胞発生率(21.1%vs.16.2%)および総細胞数(50.2vs.45.0)が増加する傾向がある。
  3. ブタ卵子卵丘細胞複合体には、LIF/STAT3シグナル伝達経路を構成するタンパク質分子が存在し、rpLIFはSTAT3のリン酸化(活性化)を促進する(図2)。
  4. 成熟培養開始44時間(減数分裂第二分裂中期, MII期)のブタ卵子のSTAT3は、rpLIF 添加の有無にかかわらず活性化されない(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. rpLIFは大量調製(COS7細胞培養上清)が可能であり、4 °Cで1年間保存した場合でも十分な生物活性を有することを確認している。
  2. rpLIFは卵胞液添加成熟培地(mNCSU-37)、無添加成熟培地(POM)の両方で卵成熟率の向上効果をあらわす。
  3. ヒトやマウスなどの他の動物種のLIFが同等の効果を持つかは未確認である。
図表1 236773-1.jpg
図表2 236773-2.jpg
図表3 236773-3.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2013/nilgs13_s18.html
カテゴリ 品種改良

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