タイトル | ウニ類の棘抜け症防除方法の確立 |
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担当機関 | 佐賀県玄海水産振興センター |
研究期間 | 2013~2015 |
研究担当者 |
野口浩介 |
発行年度 | 2014 |
要約 | ウニ類の棘抜け症における防除方法の確立に取り組み、原因菌は20℃以上では増殖が停滞し、菌塊を形成することを明らかにするとともに、PCR法による迅速診断方法を確立した。また、原因菌の侵入経路は注水海水であることを確認するとともに、飼育環境中へ原因菌を侵入させないためには、注水を紫外線照射により殺菌することが有効であることを明らかにした。 |
背景・ねらい | ウニ類は佐賀県をはじめ日本全国で重要な水産資源となっている。佐賀県では、アカウニおよびバフンウニの種苗生産を1970年代に開始し、順調な量産を続けていたところ、1981年度にアカウニの殻皮表面の黒斑、脱棘などの症状を特徴とする大量死が発生した。その後、当県のバフンウニや他県のアカウニ種苗生産機関においても年変動はあるものの、毎年1月から3月の低水温期に大量死が発生するようになり、大きな問題となった。しかし、病勢の年変動が大きく、かつ長年原因が解明できなかったため、経験的な防除処置として飼育水の昇温などが行われているものの確実な対策がないのが現状であった。本研究により、原因菌の性状を解明し、疾病の迅速な診断方法や原因菌の侵入経路などを検討することで防除方法の確立に取り組んだ。 |
成果の内容・特徴 | 調製したウニ培地を用いて罹病バフンウニ(図1)から細菌分離した後、顕微鏡下で平面に広がるコロニー(図2)を単離して感染試験を実施した。その後、原因菌の同定を行うとともに、増殖特性およびPCRによる診断方法を検討した。また、種苗生産現場における原因菌の侵入経路は、注水海水であると推測し、生産規模において紫外線照射海水で飼育した際の原因菌の動向および疾病発生の有無を検討した。さらに、発症した場合にも治癒させる方法として、原因菌の性状に基づいた昇温方法を検討した。 本研究により、原因菌はグラム陰性桿菌のOleispira属の一種であり、アカウニおよびバフンウニへ同様の病症を示すことが判明した。そして、16℃以下の低温では活発に増殖するが、20℃以上では増殖が停滞し、菌塊を形成すること(図3)を明らかにするとともに、PCR法による迅速診断方法を確立した(図4)。また、原因菌の侵入経路は注水海水であることを確認するとともに、飼育環境中へ原因菌を侵入させないためには、注水を紫外線照射により殺菌することが有効であることを明らかにした。さらに、疾病が発生した場合にも、迅速に20℃以上へ昇温し、症状が治まったら元の水温へ戻す方法(以下、一時昇温飼育法)により被害を最小限に抑えることができ、昇温にかかる経費も最小限に抑えることが可能であることを実証した。 |
成果の活用面・留意点 | これらの研究成果より、各県で行われているウニ類種苗生産の計画的な生産が可能となり、ウニ類資源の維持拡大およびウニ類養殖の発展に貢献できる。また、ウニ類資源の安定的な維持が可能となれば、海士などの漁業者の収入安定にも大いに貢献することができると考える。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4871&YEAR=2014 |
カテゴリ | 病害虫 防除 |