環形動物による有害物質分解機構の解明

タイトル 環形動物による有害物質分解機構の解明
担当機関 (独)水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所
研究期間 2012~2013
研究担当者 伊藤克敏
発行年度 2014
要約 汚染底質に曝露した海産ミミズのトランスクリプトーム解析及びメタボローム解析を行い、海産ミミズの有する有害物質分解機構の解明を試みた。その結果、海産ミミズが遺伝子と体内代謝物を連動・調節しながら汚染底質に順応し、薬物代謝酵素系を活性化することで、体外に化学物質を排出する過程において有害化学物質を分解していることが示唆された。
背景・ねらい 海洋沿岸域には、局所的に高濃度の有害化学物質が検出される底質があり、早急な環境修復への対策が求められている。これまでの研究で、環形動物の海産ミミズ(図1)が汚染底質に高い耐性を持ち且つ、汚染底質中に含まれる複数の有害化学物質を削減する能力を合わせ持つことを定性的・定量的に解明し、現場での実証に向けて取り組んでいる。本研究では、有害化学物質削減の機構解明に向けて、汚染底質に曝露した海産ミミズのトランスクリプトーム解析及びメタボローム解析を行い、海産ミミズの有する有害物質分解機構の解明を試みた。
成果の内容・特徴 1.トランスクリプトーム解析:26万種類の遺伝子断片を用いて発現量の比較解析を行った結果、10日間の汚染底質曝露により、最も発現量が増加した遺伝子は、薬物代謝に重要な第一相薬物代謝酵素であるチトクロムP450遺伝子であり、その発現量は曝露前に比べ65倍に増加した(表1)。この結果から、海産ミミズは汚染底質曝露により、薬物代謝酵素系を活性化し、体外に化学物質を排出する過程において、有害化学物質の分解を促進していることが示唆された。

2.メタボローム解析:汚染底質曝露後の海産ミミズから代謝関連物質の抽出を行い、GC-MSを用いて代謝関連物質の網羅解析を行った。その結果、43種類の代謝物を同定し、同定した代謝物の値を基にした主成分分析の結果、曝露期間の違いにより明確なグループ分けができ、海産ミミズが代謝を調整しながら汚染底質に適応していることが明らかとなった。(図2)。

3.有害物質分解にはグルタミンが関与か?:メタボローム解析の結果、消化管の機能維持に重要な役割を担うグルタミンの量が汚染底質の曝露により有意に増加することが明らかとなった。さらにトランスクリプトーム解析の結果、グルタミンの産生経路に関連する酵素であるglutamine synthetaseの遺伝子発現量が、1.7倍に上昇しており、グルタミン増加を裏付ける結果が得られた(図3)。
成果の活用面・留意点 1.浄化技術の確立に向け、科学的に裏付けされた重要な知見であり、環形動物を用いた環境改善に繋がる。
図表1 236868-1.jpg
図表2 236868-2.jpg
図表3 236868-3.jpg
図表4 236868-4.jpg
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=4904&YEAR=2014
カテゴリ メタボローム解析

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