タイトル |
気候変動下の世界の作物収量の長期予測 |
担当機関 |
(独)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2010~2014 |
研究担当者 |
古家淳
小林慎太郎
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発行年度 |
2014 |
要約 |
気候変動シナリオの下で、作物モデルを組み込んだ収量関数を用い、世界126カ国のコメ、小麦、トウモロコシ、大豆の収量の2050年までの予測を行う。低緯度地域での作物収量は、気候変動により低下する。収量予測値は、世界食料モデルで用いる。
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キーワード |
気候変動、影響予測、作物モデル、収量関数
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背景・ねらい |
気候変動が食料需給に及ぼす影響の予測のためには、長期の作物の収量予測が必要である。長期予測のためには、気温が比較的低い時には気温上昇が収量を増加させ、気温が最適値を超えた時には気温上昇が収量を減少させる、逆U字型の関係を収量関数で考慮する必要がある。そのため、作物モデルから得た気温および日射量と収量の関係式を収量トレンド関数に組み込み、気候変動が主要な作物に与える年次変動を分析する。用いたシナリオは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の5次報告書で用いられているRCP(代表的濃度経路)シナリオであり、CO2濃度が高い順に、RCP8.5、RCP6.0、RCP4.5、RCP2.6の4つのシナリオがある。
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成果の内容・特徴 |
- FAOのGlobal Agro Ecological Zoneの分析に用いられた作物モデルは、46の作物についてその内容が公表されている。その生産物や光合成速度などの関数とそれに用いられる各パラメータから、図1に示す気温と収量の関係を導く。ここでは、収量予測値の急変を避けるため、点で示される気温と光合成速度の関係を3次スプライン式で補間する。
- 対象とする作物は、コメ、小麦、トウモロコシ、大豆であり、対象国は、試作中の世界食料モデルと同じく126カ国である。収量のデータは、FAOの値であり、1961年以降利用可能な年から2007年までである。
- 各国各収量について、ロジスティック関数あるいは対数トレンドを変数とする線形関数を計測し、収量トレンド関数とする。その関数に作物モデルから得た気候パラメータを組み込む。
- 用いた気候データは、GCM(大循環モデル)であるMIROC5の月別予測値の各国での平均値であり、中国など面積の大きな国では、USDAの各作物の栽培地域図を基に平均値を作成する。
- 図2に、インドのコメと中国の小麦の収量の推移を示す。インドでは、気候変動はコメの収量を低下させる。中国の小麦収量は同国の他作物に比べて変動が大きいが、それは図1(ii)に示す気温に対する収量の傾きが大きいためである。
- 図3に、小麦を例に、RCP6.0と2010年以降気候変数が変化しない場合の比較を示す。サブサハラアフリカ諸国はじめ低緯度地域では、2020年代に対して2040年代では、収量が減少に転じる国が多い。これは、小麦の収量に関する最適気温が、他の作物に比べて低温側に偏っているためである。
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成果の活用面・留意点 |
- 収量予測値を年次別・国別に出力しているので、世界食料モデルで利用可能であり、従来よりも正確な気候変動の食料需給への影響評価が可能である。
- 高温耐性品種などの普及や、農家の栽培暦の変更など適応策の評価が可能である。
- CO2濃度の上昇による施肥効果は収量トレンドに含まれている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2014/2014_A04.html
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カテゴリ |
高温耐性品種
小麦
施肥
大豆
とうもろこし
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