Oryza(イネ)属の栽培化以前に起きたPup1遺伝子座の変異

タイトル Oryza(イネ)属の栽培化以前に起きたPup1遺伝子座の変異
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 M. Wissuwa
J. Pariasca-Tanaka
J.H. Chin
N.K. Dramé
発行年度 2014
要約 アジアイネ(Oryza sativa)及びその近縁野生種(O. rufipogon、O. nivara)、並びにアフリカイネ(O. glaberrima)及びその近縁野生種(O. barthii)におけるリン酸欠乏耐性遺伝子座Pup1内に同定された候補遺伝子PSTOL1や他の遺伝子には共通した変異がある。
キーワード イネ、リン酸欠乏耐性、Pup1、遺伝子座、イネ(Oryza)属
背景・ねらい リン酸欠乏土壌は作物生産にとって世界的な問題であるが、イネにおいてはインド型品種Kasalathからリン酸欠乏耐性遺伝子座Pup1が同定され、OsPSTOL1(タンパク質リン酸化酵素)がその候補遺伝子として見つかっている。アジアの栽培種(O. sativa)及びアフリカの栽培種(O. glaberrima)に加え、野生種におけるPup1遺伝子座の変異を解析により、PSTOL1の新規対立遺伝子を同定し、リン酸耐性育種へ利用可能な遺伝資源の拡大を図る。
成果の内容・特徴
  1. アジアイネ及びアフリカイネの栽培種および近縁野生種は、Pup1座内に存在する8個の遺伝子に特異的なマーカーの遺伝子型により5つのグループ(K、G 、G+、N、M)に分類できる(図1)。
  2. アフリカの栽培種(O. glaberrima)及び野生種(O. brthii)は共にPup1座内の遺伝子K05からK42の領域約120kbが欠損し、PSTOL1の新規対立遺伝子(K46-G)を持つ「G」と、PSTOL1以外の他の遺伝子で部分的な欠失や置換が存在する「G+」がある (図1)。
  3. アジアの栽培種(O. sativa)及び野生種(O. rufipogon)は共に、変異のないKasalath の「K」、PSTOL1も含むK41からK59に至る90kbの領域を欠損した日本晴の「N」、並びに部分的に新規の配列を持つ「M」が認められる。
  4. Pup1遺伝子座内の変異は、栽培種と野生種に共通しており、栽培化前に生じたと考えられる。
  5. 一部の陸稲NERICA品種とその親品種CG14(O. glaberrima)の持つPSTOL1の新規対立遺伝子(K46-G)は、Kasalathの遺伝子(K46-K)に比べ35bpの塩基置換があるが、タンパク質合成や遺伝子発現に影響はない。
  6. PSTOL1のそれぞれの対立遺伝子に特異的な2種のマーカー(K46-K, K46-CG)により、アガロースゲルで正確に対立遺伝子の判別ができる(図2)。
  7. このマーカーによりアフリカの栽培種と野生種では共にK46-Gを持つことがわかる。アジアのイネでも、低頻度であるがK46-Gが存在する(図1)。
成果の活用面・留意点
  1. PSTOL1は肥沃な環境条件下では効果を示さないが、乾燥しやすい陸稲栽培条件や低肥沃土壌地域に適応して残ってきたと推定できるが、その理由やメカニズムを解明する必要がある。
  2. PSTOL1の新規対立遺伝子(K46-G)の機能を圃場で確認する必要がある。
  3. Pup1座内のK20-2マーカーに対応する遺伝子が、PSTOL1の下流標的遺伝子であることから、PSTOL1K20-2が相互作用してリン酸欠乏耐性に働く可能性があり、K20-2との相互関係を検証していく必要がある。
図表1 236916-1.jpg
図表2 236916-2.jpg
図表3 236916-3.jpg
図表4 236916-4.jpg
図表5 236916-5.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2014/2014_B06.html
カテゴリ 育種 遺伝資源 乾燥 栽培条件 品種 陸稲

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