ラオスにおける多様な非木材林産物は農家経済にとって高い有益性を持つ

タイトル ラオスにおける多様な非木材林産物は農家経済にとって高い有益性を持つ
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 木村健一郎
米田令仁
小林慎太郎
Singkone Xayalath
Bounpasakxay Khamphumi
Phonesavanh Manivong
発行年度 2014
要約 ラオス中山間地域では森林から400種類を越える多種多様な非木材林産物が採集されている。その9割が自家消費であり、中でもキノコ類は周年的に採集されており、安定した食料となっている。また、ホウキグサなどの繊維部門の産品は地域住民の大きな現金収入源である。
キーワード キノコ類、ホウキグサ、セーフガード
背景・ねらい 熱帯モンスーン気候であるラオス中山間の地域住民は、稲作をおこないつつ、森林から非木材林産物(以下、NTFPs:Non-timber forest products)を採集して生活している。天水依存の農業が多いラオスではしばしば洪水や干ばつに見舞われ、作物生産が不安定であるため、NTFPsの採集は地域住民の生活のセーフティーネットとなっている。しかし、焼畑や森林伐採による森林減少のため、NTFPsの利用に変化が生じている。NTFPsの利用実態と農家経済への貢献を把握するため、ビエンチャン県北西部の一農村において、2012年7月から翌年6月まで全戸(140世帯)を対象に、毎日のNTFPsの種類、採集量、利用目的を調査した。分析には有効回答(104世帯)を用いた。経済価値は各NTFPsの取引価格から価格表を作成し、採取量を乗じて貨幣換算した。
成果の内容・特徴
  1. NTFPsとしては植物系(キノコを含む)289種類、動物系124種類の併せて400種類を越える多種多様な産物が利用されている(表1)。
  2. NTFPsの利用目的は、繊維、樹脂、薬に属するNTFPsを除くと、9割以上が自家消費であり、食用とするものが大半である(表1)。
  3. 森林環境に影響されやすいキノコ類に注目すると、24種類のうち6種類で採集量の9割を占めている。そのうち5種類は雨季に採集されているが、ケガワタケ類(学名Lentinus polychrous)は乾季に採集されており(図1)、キノコ類は周年採取される貴重な食料となっている。
  4. 繊維、樹脂、薬に属するNTFPsは販売を目的として採集され、中でも繊維に属するNTFPsは約8トン(風乾重)採集されている(表1)。この大半を占めるNTFPsはホウキグサであり、ホウキ等の材料となる花序を採集する。ホウキグサは焼畑後の休閑林に出現し、休閑1〜3年目に多量に採集でき、農閑期である乾季の貴重な収入源となっている。
  5. 世帯当たりのNTFPs採集量を貨幣換算すると、548万KIP(内訳は、植物系382万KIP、動物系166万KIP)の経済価値と推定される(表1)。米の量に換算すると、モチ米約2.4トンに相当し、ラオス人の年間米消費量250Kg(籾重)/人から、9.6人分の食料に及び、農家経済に大きく貢献している。
成果の活用面・留意点
  1. ラオス中部の一農村の調査であるが、一年にわたって植物から動物までを含めた詳細な利用実態を把握した情報であり、地域住民の生存戦略を理解する上でも重要である。なお、本資料に薪のデータは含まれていないことから、これを含めるとさらに大きな経済価値を持つと推測される。
  2. 参加型森林管理など森林保全や農村開発を実施する機関において、先住民・地域住民の保護、生物多様性の保全といったセーフガードの基盤資料として利用できる。
  3. 農林省林野局及び天然資源環境省といったラオス行政機関の森林戦略において位置づけられているNTFPsの具体的なデータとして活用できる。
図表1 236918-1.jpg
図表2 236918-2.jpg
図表3 236918-3.jpg
研究内容 http://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2014/2014_C01.html
カテゴリ 中山間地域

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