タイトル |
非晶質ケイ酸カルシウムによる畜舎排水高度処理とリン回収 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
田中康男
長谷川輝明
山下恭広
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発行年度 |
2014 |
要約 |
開発した畜舎排水高度処理システムは、活性汚泥処理後の養豚排水に、非晶質ケイ酸カルシウム水和物を添加することで脱色、リン除去、消毒を行うものである。リンは普通肥料と同等の肥効資材として回収できる。
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キーワード |
養豚、汚水浄化、脱色、リン除去・回収、消毒
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背景・ねらい |
養豚農家では汚水浄化処理の必要な場合が多く、活性汚泥方式が標準的に利用されている。しかし、活性汚泥法による色度、リンの除去には一定の限界があり、除去率を高めるには高度処理の付加が必要である。また、資源循環の観点から、除去したリンについては回収利用が重要である。さらには、衛生・防疫の観点から、より安定した消毒も望まれる。これらの多面的要請に効率的に応えるため、非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)を利用した高度処理システムを開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 浄化施設から取水した活性汚泥法処理水とCSHスラリーを円筒状の処理槽の底部から流入させると、リンと色度成分を吸着したCSHが底部に沈降し、処理水は上部から流出する。処理水はアルカリ性のため、炭酸ガス通気で中和後放流する。未中和での放流事故を防ぐため、炭酸ガスボンベが空になると自動停止する安全機構を備えている(図1)。
- CSHを0.06%添加すると、色度は約80%、リン酸は約90%低減する(図2)。また小型施設での稼働実績では、大腸菌群および大腸菌は0.06%添加で約99%低減する。
- 槽内の沈殿物は定期的に引抜いてフレコンバックに投入すると水分が抜け固形物として回収される。この回収物は、「く溶性」リン酸を15%以上含み、有害重金属は基準値以下である。また「植物に対する害に関する栽培試験の方法」によるコマツナの発芽・生育試験では植害性は認められない。従って、普通肥料の副産リン酸肥料に匹敵する肥料資源として利用可能である。
- 10 m3/日(母豚換算で約100~200頭の飼養規模に対応)の施設の建設費は約190万円と試算され、母豚1頭当たりでは約0.95~1.9万円となる。なお、活性汚泥施設の母豚1頭当たり建設費は約24~55万円とされている(畜産環境整備リース協会「家畜ふん尿処理システム経済性等調査分析報告書-養豚経営について-」平成5年度)。よって、二次処理までの建設費に1.7~7.9%上積みすれば高度処理まで可能な施設が建設できる。
- 維持管理費(電力、薬剤費)は、CSHの添加量が0.05~0.15%で743~1443円/日(表2)であり、常時飼養頭数1頭年当たりで97~376円となる。上記報告書では、活性汚泥施設の維持管理費用は826~1812円/頭・年とされているので、二次処理までの維持管理費用に5.4~45.5%上積みすれば高度処理まで対応できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:放流水の外観改善が必要な養豚事業場
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:当面は関東南部地域に約10施設。その運転実績を踏まえて全国の水質汚濁苦情発生養豚場への拡大を目指す。
- その他:本試験データは、出願特許に基づき千葉県事業で養豚農家に設置した処理能力10 m3の実証施設の稼働実績である。CSH回収物は、普通肥料登録の可能性も有るが、経営内または近隣で有効利用することもできる。硫黄脱窒槽を付加することで硝酸性窒素除去も可能となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2014/14_060.html
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カテゴリ |
肥料
経営管理
こまつな
豚
薬剤
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