新しい遺伝子型の牛パラインフルエンザウイルス3型

タイトル 新しい遺伝子型の牛パラインフルエンザウイルス3型
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2012~2014
研究担当者 小西美佐子
亀山健一郎
大倉喬
竹内薫
清水和
秋山昌紀
発行年度 2014
要約 2012年にわが国で分離された牛パラインフルエンザウイルス3型は、全ゲノム解析により近年海外で存在が確認されたばかりの遺伝子型(genotype C)に分類される。
キーワード 牛呼吸器ウイルス、牛パラインフルエンザウイルス3型、ゲノム解析
背景・ねらい 牛ウイルス性呼吸器病は、年齢を問わず集団発生し、生産性の低下や治療費の増加など、農家に多大なる経済的被害を与えている。牛パラインフルエンザウイルス3型(BPIV3)は、単独感染でも様々な呼吸器症状を示すだけでなく、他のウイルスや細菌との複合感染によって重篤な肺炎を引き起こすため、特に重要視されているウイルスである。近年、BPIV3の遺伝子型がgenotype A、BおよびCに分類されることが明らかとなったが、これまでわが国ではgenotype A しか検出されていない。2012年に肉用牛肥育農家で発熱、発咳、食欲不振および水様性鼻汁漏出を主徴とする呼吸器病が発生し、発症牛のうち1頭の鼻腔スワブから、わが国初のgenotype Cと考えられるBPIV3HS9株が分離された。そこで、わが国の牛ウイルス性呼吸器病対策に資することを目的とし、同株の全ゲノム配列解析を実施する。
成果の内容・特徴
  1. 現在、国内で多用されているBPIV3の遺伝子検出用RT-PCR法ではP遺伝子を標的としたプライマーを用いている。HS9株は同法で増幅されにくく、その塩基配列からgenotype Aとは異なる遺伝子型であることが示唆される。
  2. HS9株は、過去の国内株と比較してP遺伝子領域で12塩基欠失している。また、HN遺伝子およびF遺伝子上流の非翻訳領域にそれぞれ6および12塩基の欠失が認められる(図1)。
  3. HS9株は、過去のBPIV3国内株が属するgenotype Aではなく、中国株(SD0835株)および韓国株(12Q061株)と同じくgenotype Cに分類される(図2)。genotype C は、2010年に世界で初めて存在が確認されたBPIV3の新しい遺伝子型である。
  4. 本株が分離された県では、同時期にgenotype Aも分離されていることから、国内で複数の遺伝子型のBPIV3が流行していることが推測される。
成果の活用面・留意点
  1. 本分離株の塩基配列情報は、公的遺伝子データベースに登録済である(GenBank/EMBL/DDBJ accession number: LC000638)。
  2. 全国で病性鑑定に用いられているRT-PCR法では、genotype Cが検出されない可能性が高い。また、わが国が牛を生体として多く輸入する豪州では、独自の遺伝子型(genotype B)が存在する。従って、国内防疫を強化するためには、全遺伝子型を検出可能なRT-PCR法を開発する必要がある。
  3. 遺伝子型による病原性や現行のワクチンの有効性の違いを明らかにするため、今後もBPIV3国内株の遺伝子解析を継続し、各遺伝子型の流行状況を把握する必要がある。
図表1 237120-1.jpg
図表2 237120-2.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2014/niah14_s02.html
カテゴリ データベース 肉牛

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