Histophilus somniの主要外膜蛋白質遺伝子を標的とする新規遺伝子改変法

タイトル Histophilus somniの主要外膜蛋白質遺伝子を標的とする新規遺伝子改変法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2010~2014
研究担当者 上野勇一
星野尾歌織
田川裕一
発行年度 2014
要約 病原性や防御抗原に関わると考えられる牛病原細菌Histophilus somniの主要外膜蛋白質(MOMP)遺伝子は、改変が困難であったが、配列の大きく異なる菌株のMOMP遺伝子を直接導入、交換する新たな遺伝子改変法により、その機能解析が可能となる。
キーワード Histophilus somni、主要外膜蛋白質、遺伝子改変法
背景・ねらい Histophilus somniは牛の肺炎や髄膜脳脊髄炎の原因となる重要な病原細菌であり、菌体表層には、主要外膜蛋白質(MOMP)が認められる。他菌種のMOMPに相当する蛋白質では病原因子や防御抗原としての役割を持つことが報告されており、H. somniにおいても強毒株と弱毒株間ではMOMPの抗原性や分子サイズが異なること、MOMPに対して産生されるIgE抗体が疾病増悪因子となる可能性が指摘されている。従って、本症の発病機構の解明や効果的な予防法開発の為にはMOMPの機能解析が不可欠である。
病原細菌の遺伝子機能解析では、標的となる遺伝子を破壊・改変し、菌の性状の変化を観察する手法が一般的に行われる。遺伝子破壊株作出のためには、通常、大腸菌などで標的遺伝子をベクターにクローニングし、遺伝子改変用ベクターを構築する必要があるが、MOMP遺伝子の場合は、他菌種での本遺伝子の発現が致死的に作用するため、遺伝子改変用ベクターの構築が困難である。また、MOMPは菌の発育に必須の物質輸送に重要な役割を果たす蛋白質である為、遺伝子破壊株を用いる従来の解析法も応用できない。本研究では、これまで遺伝子改変が困難であったH. somniのMOMP遺伝子の機能を解析するため、新たな遺伝子改変法を確立する。
成果の内容・特徴
  1. 本法では、遺伝子改変用ベクターの構築は行わず、PCRで増幅•連結した遺伝子断片を直接、標的菌細胞に導入して遺伝子改変を行う(図1右)。そのため、大腸菌などでクローニングが困難な遺伝子の改変も可能である。
  2. H. somniのMOMP遺伝子は、強毒株と弱毒株の間で塩基配列が大きく異なる。新たに開発した遺伝子改変法では、病原性の異なる株間で配列の異なるMOMP遺伝子を交換することにより、生育に必須な機能を喪失させることなく改変株を作出できる。その結果、本遺伝子の病原性への関与を解析することが可能となる(図1右)。
  3. 本法で作出した異なる株由来のMOMPを発現する遺伝子改変株は、遺伝子改変前後で培地中での生育に変化は認められないが、牛血清の殺菌能に対する抵抗性に変化がみられる。この結果は、MOMPが血液中での菌の生残性に関与することを示唆しており、遺伝子機能解析における本法の有用性が示されている。
成果の活用面・留意点
  1. H. somniのMOMP遺伝子改変株と親株との性状の違いを詳細に比較することにより、MOMP遺伝子の新たな機能を同定することが可能である。特に、病原因子や防御抗原としての機能が明らかとなれば、MOMPを標的とするワクチン開発につながる。
  2. 従来の遺伝子改変法と組み合わせ、H. somniのあらゆる遺伝子を標的とした改変株の作出および機能解析を実施することにより、本菌の発病機構の解明が可能となる。
図表1 237126-1.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2014/niah14_s08.html
カテゴリ 抵抗性 輸送

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