タイトル |
ネグサレセンチュウおよびネコブセンチュウの多種同時診断技術 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
串田篤彦
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発行年度 |
2015 |
要約 |
国内の畑地に発生するネグサレセンチュウとネコブセンチュウ計13種を検出できる技術である。本技術は、土壌から分離した線虫群集からDNAを抽出し、1回のPCRと電気泳動を行うだけで上記有害線虫のうち10種の同時種判別ができる。
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キーワード |
ネグサレセンチュウ、ネコブセンチュウ、簡易診断技術、多種同時評価
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背景・ねらい |
国内各地において有害線虫種の診断需要は多いが、種を判別するには高度な専門知識や技術が不可欠なため、その実施が一部の線虫専門研究者だけに限られる問題がある。そこで、有害線虫の中でも診断需要が多いネグサレセンチュウおよびネコブセンチュウについて、分子生物学的手法を応用し、線虫の形態を観ることなく簡易なルーチンワークだけで種判別できる技術を開発することを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- 診断の対象種は、国内の畑地において農業上問題となる全13種(キタネグサレセンチュウ(以下「センチュウ」を省略)、クマモトネグサレ、クルミネグサレ、チャネグサレ、ニセミナミネグサレ、ノコギリネグサレ、ミナミネグサレ、ムギネグサレ、モロコシネグサレ、アレナリアネコブ、キタネコブ、サツマイモネコブ、ジャワネコブ)である。
- 本技術は、これらのrDNA-ITS1領域のDNA長が種間で異なることを利用して種を区別する。対象種に対して特異性を有するグループ特異的プライマーにより、これらの該当領域DNAだけをPCR増幅し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により、DNA長差を検出する。工程は簡易であり、DNA抽出作業開始から9時間程度で結果が得られる(図1)。
- 本法により、対象種をそのメインバンド位置によって種判別できる(図2)。ただし、サツマイモネコブ、アレナリアネコブ、ジャワネコブは、バンド位置が同一なため種を区別できない。一方、ミナミネグサレは、宿主寄生性がやや異なる3つのPCR-RFLPフェノタイプA、B、Cが存在するが、それがAであるか、それ以外かが判別できる。
- 種の判定は、種判定用マーカーの位置と比較しながら行う(図3)。約2000頭の線虫群集中に対象種が1頭しかいない場合でも確実に検出し、種判別できるので、早期警戒に有用である。複数種が混発している場合でも、これらを同時に検出、判別できる(図3)。
- 診断用線虫サンプルは、ベールマン法などで土壌中から分離した線虫群集を用いる。したがって、死んだ個体は検出対象にならない。線虫DNAの抽出は「PCR-DGGE法による土壌線虫相解析法」(農業環境技術研究所 2008)に基づく。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:公設の農業試験場の病害虫診断担当職員および病害虫診断を実施する民間検査機関
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の計15機関で活用
- 種判定用マーカー(ミナミネグサレのフェノタイプAおよびB、ノコギリネグサレ、キタネグサレ、クマモトネグサレ、クルミネグサレ、モロコシネグサレ、キタネコブのメインバンド位置を示す8本で構成)は、北農研から無料で提供する(100レーン分/回)。
- 工程の詳細は、「ネグサレセンチュウおよびネコブセンチュウの多種同時診断技術マニュアル」を参照する。
- 1サンプルあたりの調査コストは、約550円である(10サンプルを同時泳動した条件)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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図表9 |
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図表10 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2015/15_044.html
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カテゴリ |
害虫
簡易診断
くるみ
コスト
診断技術
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