タイトル |
マーシャル諸島共和国淡水レンズ保全管理マニュアル |
担当機関 |
(国)国際農林水産業研究センター |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
幸田 和久
小林 勤
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発行年度 |
2015 |
要約 |
本マニュアルはマーシャル国において干ばつ時の過剰揚水により塩水が部分的に上昇したマジュロ環礁ローラ島の淡水レンズの水利用法を改善し、水資源管理担当の公的機関による保全管理体制のあり方を示している。持続的水利用法が当該国の政策に反映される。
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キーワード |
淡水レンズ, 持続的水利用, アップコーニング
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背景・ねらい |
大洋州のマーシャル諸島に位置するマジュロ環礁は約2万8千人の住民が居住しているが、河川・湖沼がなく水資源が脆弱である(図1)。住民は生活用水や灌漑のための水源を環礁内のローラ島の淡水レンズ(地下の海水の上に浮かぶレンズ状の淡水)に依存している。ローラ島の淡水レンズは、月別降水量が平均からわずかでも小さくなると淡水レンズの塩淡境界にアップコーニング(塩水の部分的な上昇)が生じるクリティカルな状況にある。淡水レンズを健全に維持しながら効率的な水利用を行うために、科学的知見に基づいた淡水レンズ保全管理マニュアルが必要とされる。
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成果の内容・特徴 |
- 本マニュアルは4つの章と付属資料で構成される(図2・図3)。第2章は調査・試験、第3章は適切かつ効果的な水利用・水質保全管理の促進、第4章は保全管理体制を記載している。当該国の水資源管理担当の公的機関を対象とし、淡水レンズの保全管理における実務の参考資料として用いられる。
- 特に第3章は従来行われてきた低い塩分濃度での揚水停止及びローラ島以外への送水停止という対処療法的な淡水レンズの水利用法を改善し、降水量に応じた保全揚水量や分散揚水法(取水井の数を増やし揚水強度を減らす方法)等、水利用のあり方についての提言が記載されている。
- この水利用のあり方は、淡水レンズの保全項目をアップコーニング、保全目標をアップコーニングがシャフト(横井戸の集水管)の高さまで上昇しないこととして、涵養量と揚水量を変えた数値実験により明らかにされる。この保全目標は、アップコーニングの周囲に揚水の影響を受けず残った淡水地下水を農業用水や生活用水として持続的かつ効率的に利用していくために設定されている。
- これまでの取組等を付属資料に記載し、主要な成果を本章にとりまとめ、JIRCASのHP上で「マーシャル諸島共和国淡水レンズ保全管理マニュアル」を公表している。
- 本文・付属資料:http://www.jircas.affrc.go.jp/english/manual/LauraLens/
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成果の活用面・留意点 |
- 本マニュアルの内容は、マジュロ環礁で開催した「淡水レンズ保全管理セミナー」で公表されている。淡水レンズ管理組織の意思決定機関であるローラレンズ委員会を対象に説明会も開催している。本マニュアルは当該国で開催した検討会を踏まえて作成されている。
- 2015年2月3日、ヒルダ大統領が干ばつ緊急事態宣言を発出した。本マニュアルは干ばつに被災した島民がローラ島の淡水レンズを活用するため干ばつ対策検討委員会等で既に広く使用されている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2015_a04
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カテゴリ |
くり
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