氾濫低湿地で高位安定収量を示すイネ品種がある

タイトル 氾濫低湿地で高位安定収量を示すイネ品種がある
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 小田 正人
辻本 泰弘
桂 圭佑
松嶋 賢一
Inusah Baba
Dogbe Wilson
坂上 潤一
発行年度 2015
要約 白ボルタ川上流域(ガーナ)の氾濫低湿地における天水直播水稲の収量は、河川からの距離で大きく異なり、かつ年次間変動も大きい。このような環境下でAmankwatia、Bodia、Sakai(いずれもガーナ在来品種)、IRBL9-W[RL] (日本-IRRI共同プロジェクト研究育成系統)は安定して相対的に高収量を示す。
キーワード アフリカ, 水稲直播, 氾濫低湿地, 白ボルタ川, AMMI分析
背景・ねらい 近年、西アフリカ諸国ではコメの消費量が急伸しており、コメ増産は焦眉の課題である。その解決の方途のひとつに大型河川周辺の未利用氾濫低湿地を活用した水稲生産がある。しかし、灌漑水田の単収がヘクタールあたり4トンであるのに対し天水低湿地の単収は1トンと低く(Rodenburg and Demont 2007)、適性品種の導入よる収量の向上が期待される。本研究は、氾濫低湿地環境に適応したイネ品種を探索する。
成果の内容・特徴
  1. 氾濫低湿地の環境は河川からの距離によって大きく異なる。本研究の成果は、氾濫程度の異なる4地点(F1~F4)、3年間(2012〜2014)にわたる栽培試験により得たものである(図1)。
  2. 天水直播水稲の収量反応で見ると、年次間変動も大きい。その収量に関する品種と環境の相互作用の傾向は主成分分析により、環境群はE1〜E3に、品種群はG1〜4にグループ化できる(図1)。
  3. 品種群G-2は環境群E-3で収量が高かったが、特定環境でのみ高収量であっても、年次によって環境が大きく異なる氾濫低湿地においては、適性品種とは言えない(図1)。
  4. 品種群G-3は、収量水準が中程度であり、環境の変異に対し比較的安定している(図1)。
  5. 品種群G-4は環境群E-1で収量が高く、他の環境でも一貫して相対的に多収を示すことから氾濫低湿地における適性品種といえる(図1)。
  6. 個別品種でみると氾濫低湿地の適性品種はAMMI (additive main effect and multiplicative interaction) 分析図で中心近く(環境に対して安定)かつ高収量の条件を満たす品種でAmankwatia、Bodia、Sakai(ガーナにおける在来品種)、IRBL9-W[RL](日本-IRRI共同プロジェクト研究育成系統https://www.jircas.affrc.go.jp/kankoubutsu/seika/seika2011/pdf/2011-10.pdf)、がある(図2)。IR42は中心から離れており安定性が低い。
成果の活用面・留意点
  1. 品種群G-1は早生品種であるが、本研究環境では早生品種による生育後期の干ばつリスク回避は有効でないことが示されており、この知見は今後の当地における育種戦略に活用できる。
  2. 本成果は、サブサハラアフリカのコメ生産を10年間で倍増(1,400万トンから2,800万トン)することを目標とする「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)による栽培環境分類の「天水低湿地」の収量増に貢献する。
  3. 本成果は、氾濫低湿地における天水直播水稲栽培の可能性を品種の面から裏付ける。なお、適性品種と他品種の違いの解明にはさらなる研究が必要である。
図表1 237432-1.jpg
図表2 237432-2.jpg
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2015_b01
カテゴリ 育種 水田 水稲 品種

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