エゾアワビの高精度年齢査定法の開発

タイトル エゾアワビの高精度年齢査定法の開発
担当機関 岩手県水産技術センター
研究期間 2012~2012
研究担当者 大村敏昭
発行年度 2015
要約 エゾアワビの貝殻内唇断面に形成される障害輪の有効性を調べた。岩手県沿岸では低水温期に障害輪が1本形成され、年齢形質として有効であることが示唆された。また、放流貝は放流時にも障害輪が形成されることが示唆された。本研究の方法では、焼殻法と比較して、8歳以上の高齢貝で年齢査定精度が向上すると考えられた。
背景・ねらい エゾアワビの貝殻内唇断面に形成される障害輪の有効性を調べた。岩手県沿岸では低水温期に障害輪が1本形成され、年齢形質として有効であることが示唆された。また、放流貝は放流時にも障害輪が形成されることが示唆された。本研究の方法では、焼殻法と比較して、8歳以上の高齢貝で年齢査定精度が向上すると考えられた。
成果の内容・特徴 エゾアワビの貝殻内唇断面は主に真珠層で形成されるが、部分的に稜柱層の薄い層が殻の内側縁辺まで達した障害輪が確認される(図2)。この障害輪の形成時期を、人工種苗および岩手県沿岸の海域から採集されたエゾアワビ貝殻の酸素安定同位体比分析により推定した。本種の成長が停滞する水温7℃以下になる冬~春季を経過した個体には例外なく1本の障害輪が形成され、年齢形質として有効であることが示唆された。一方、放流貝は放流時にも1本の障害輪が形成されることが示唆された(図2,3)。本研究の方法(内唇断面法)および焼殻法で推定された年齢を比較すると、両者は7歳までは高い確率で一致したが、8歳以上では焼殻法による推定年齢が小さかった(表1)。高齢のエゾアワビは殻の伸長が著しく小さくなるため焼殻法では年輪を見落とし易かったが、内唇は殻の伸長に伴い指数関数的に厚さが増すことから、内唇断面法はとくに高齢貝で焼殻法より正確な年齢査定が可能と考えられる。
成果の活用面・留意点 従来法である焼殻法は、貝殻を破壊しながら年齢査定するために標本が原形をとどめず査定結果の再検討が不可能であるが、内唇断面法では標本が残るため再検討が可能であり、さらに貝殻の一部を切り出すだけで他の部分も残るため、焼殻法など他の方法による年齢査定を併用できる利点がある。また、焼殻法は貝殻表面全体の付着生物を除去しなければ年輪の確認が難しいが、内唇断面法では螺頂部周辺の付着生物のみを除去すればよく、さらに内唇断面標本を並べて包埋すると一度に複数個体を処理できるため、焼殻法に比べ作業時間の短縮に繋がる。内唇断面法ではバックカリキュレーションが不可能であるため、同一標本の年齢を内唇断面法と焼殻法で確認し、結果が一致した標本の年齢査定結果を採用することで、過去の成長も精度良く把握できると考えらえる。本研究では、岩手県沿岸に生息するエゾアワビについては内唇断面の障害輪が年齢形質として有効であることを示したが、障害輪の形成は海域の水温変化と関係があることから、本方法を他海域にも適用できるか検討が必要である。
図表1 237494-1.jpg
図表2 237494-2.jpg
図表3 237494-3.jpg
図表4 237494-4.jpg
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=5142&YEAR=2015
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